「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2025年6月5日

Q:一刻も早く離婚したい A:離婚届、慌てて出さないで

▼Q 夫の浮気が重なり、一刻も早く離婚したいです。夫は離婚届には署名しましたが、金は一切払わないと言っています。離婚届を出してしまってよいでしょうか。

▼A 協議離婚をしようとしているのですね。夫婦が離婚することの合意と、お子さんがいる場合には親権者の指定についての合意があれば協議離婚は可能です。この二つの合意があれば署名済みの離婚届を役場に届け出ること自体は問題ありません。

しかし、離婚の場面では、夫婦で築いた財産を分け合う「財産分与」、お子さんがいる場合はそのお子さんの監護養育に必要な「養育費」、お子さんと離れて暮らす側の親との「面会交流」のことなど、きちんと決めておくべき大切な条件があります

これを決めずに急いで離婚だけしてしまうと、離婚後の生活が不安定になるリスクが増します。例えば、離婚後に養育費を受け取れない、面会交流のことでトラブルになる、といったケースはよくあります。ひとり親家庭に対する手当や医療費、就労支援などの公的支援制度もありますが、まずは夫婦間で権利関係を明確にしておくことが重要です。

別居していても離婚するまでは相手方に婚姻費用の支払義務があります。婚姻費用の支払いを受けながら離婚の条件をきちんと話し合うという方法も考えてみてください。離婚については、条件や進め方が問題になります。6月23~27日、無料電話相談「女性の権利ホットライン」を実施します。詳しくは福岡県弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 6月5日分掲載(柏熊志薫)

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