「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年9月28日

早出の残業代を支払うべきか?

▼Q IT企業を設立し、従業員が20人います。始業は午前9時なのですが、ある従業員からタイムカードの打刻は午前8時20分過ぎなので、早出の分の残業代を支払ってくれと言われました。支払わないといけないのでしょうか。

▼A まず、その従業員が早出時間に実際に仕事をしているかが問題です。仕事をしていなければ、残業代を支払う必要はありません。

次に、実際仕事をしている場合でも、それが会社の指揮命令によるものでなければ、法的には支払う必要はありません。例えば、電車のダイヤの関係や車通勤で渋滞を避けるため、早めに出て自主的に仕事をしている場合などです。

一方、会社の指示で早出の仕事をしている場合は支払う必要があります。明確な指示がなくても、早出して仕事をしないと追い付かない場合などは、実質的には指揮命令があるものとして支払う必要があります。

所定始業時刻とタイムカードの打刻が大きくずれていること自体も問題です。(1)交通機関の影響などで早出している場合には、仕事をする必要がないので自由に過ごしてほしいこと(2)その場合、所定始業時刻かその少し前にタイムカードを打刻すること(3)早出で仕事をする必要がある場合は残業申請し承認を得ること-を周知すべきです。不自然な打刻は聞き取りや業務量の確認を行いましょう。

さらに、フレックスタイム制という方法もあります。早く出社して早く帰るなど、より自由に働きたいという従業員の要望に応えることができます。導入してみてはいかがでしょう?

西日本新聞 9月28日分掲載(渡邉牧史)

目次