「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年9月6日

虐待かな?と思ったら

▼Q 80歳の母は独身の兄と一緒に暮らしています。私は県外にいるのですが、最近、兄が母の年金を無断で使うようになり、母はデイサービスも利用できなくなっているようです。どうしたら良いでしょうか。

▼A 事実なら、高齢者虐待防止法が定める虐待に当たるおそれがあります。65歳以上の高齢者に対する虐待行為には(1)身体的虐待(2)介護・世話の放棄(3)心理的虐待(4)性的虐待(5)経済的虐待-があります。今回は、財産を勝手に処分する経済的虐待に当たる可能性があります。

この法律は、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、市町村などに通報することを求めています。虐待と断言できない状況でも通報することができます。自治体職員には守秘義務があるため、あなたが情報提供したという事実が周囲に漏れる心配はありません。

あなたには、ためらいがあるかもしれません。しかし一報を受けた市町村は、虐待の事実を確認するだけでなく、養護者であるお兄さんに助言したり、必要な援助機関を紹介する措置を取ったりできます。

お兄さんも介護で大変な苦労をされているのかもしれません。通報はお母さんを守るためだけではなく、お兄さんを救うことにもつながるはずです。その後は市町村が主体となり、2人を地域と家族でサポートしていくことになります。決して問題を1人で抱え込まないようにしてください。

西日本新聞 9月6日分掲載(原口圭介)

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