「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2025年3月20日

「心情伝達制度」とは?

▼Q 最近、創設されたという「心情伝達制度」とは、どのような制度ですか。

▼A 犯罪の被害者などが自分の気持ちを、刑務所や少年院といった刑事施設の職員を通じて加害者に伝える制度です。

制度を利用したいときは、まず矯正管区・強制施設に申し出をして手続きをします。受理されると、聞き取りの日時や場所が決まり、刑務官ら「被害者担当官」と呼ばれる専任の職員が被害者側の心情を丁寧に聞き取り、書面(心情等録取書)を作成します。聞き取りの際には、話したいことのメモや資料を準備していくと役立つでしょう。その後、被害者担当官は、刑事施設にいる加害者に心情等録取書を読み聞かせます。被害者側が希望すれば、伝達の際に加害者が述べた内容について通知(心情等伝達結果通知書)を受けとることもできます。

この制度は2023年12月1日から運用されています。被害者側のつらい気持ちや反省を望む気持ち、被害弁償などについて聞きたいことを、加害者に伝えることができます。加害者にとっても、被害者の心情を知ることで、贖罪(しょくざい)や更生の気持ちが生じることが期待されます。

一方、残念なことですが、加害者の心無い言葉で、被害者がかえってつらい思いをしたという事例も報告されています。

制度を利用する場合はその点を十分考慮し、被害者担当官にあらかじめ確認の上、弁護士や支援者に同席してもらうことなども検討するとよいでしょう。

西日本新聞 3月20日分掲載(池田泉)

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