「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年11月25日

自転車にひき逃げされたら

▼Q 青信号で横断歩道を横断中に自転車がぶつかってきました。私は転倒してけがをしたのに、自転車は走り去ってしまいました。

▼A 自転車にぶつかられるのも交通事故です。事故に遭ったらその場ですぐ110番してください。目撃者がいれば警察が来るまで一緒に待ってもらうか、連絡先を聞いておきましょう。今回はすぐ通報できなかったようですが、けがをしているので、今からでも警察に届けることをお勧めします。

自転車事故で人にけがを負わせると、過失傷害罪や重過失傷害罪、その場から走り去ってしまうと救護義務違反(ひき逃げ)になり得ます。警察が捜査すれば、防犯カメラなどで相手を特定できる可能性があります。あなたも事故で負ったけがはできるだけ写真に撮っておき、医師に診断書を発行してもらいましょう。また、治療費や通院交通費などかかったお金の領収書は保管しておきましょう。

警察の捜査で相手が分かれば、刑事処分が進められます。あなたの受けた損害は、刑事処分とは別の民事手続きで、相手に賠償請求することになります。難航するようであれば、弁護士に相談してください。

最近、多くの自治体が自転車保険(損害賠償責任保険)の加入を義務化しています。相手が加入していれば、保険金で賠償を受けられる可能性もあります。相手が分からない場合、健康保険や労災、あなたが加入している保険などから支給を受けるほかは、泣き寝入りせざるを得ません。そうならないためにも、とにかく事故直後に110番することが重要です。

西日本新聞 11月25日分掲載(中村元祐)

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