「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2017年10月11日

LGBTは今

日本では性的少数者(LGBT)が学校や職場でいじめなどの被害に遭ったり、不自由な思いをしたりする事例が後を絶たない。生活面の法律Q&A「ほう!」な話(毎週水曜掲載)を担当する福岡県弁護士会の弁護士3人に、LGBTにまつわる疑問について解説してもらった。

●セーラー服嫌がる娘にどう対応

▼Q
中学1年の娘が入学以来学校に行こうとしません。セーラー服を着たくないからだと言います。小さい頃からスカートを嫌がり、ズボンばかりはいていました。

▼A
親としては心配だとは思いますが、まずはお子さんの気持ちに寄り添うことが大切です。なぜセーラー服を着たくないのか-。一つの可能性として、お子さんが自分の性をどのように捉えているのか、ということに関わりがあるかもしれません。

私たちは出生時に身体的特徴などから「男性」「女性」の性別を割り当てられます。けれども人によっては、成長過程で自分自身をどんな性だと捉えるか(性自認)、どんな髪形にして、どんな服を着たいか(性表現)といった点で、割り当てられた性別や、あてがわれる制服が、自分の考える性別や、違和感なく過ごせる衣類と一致しない、ということが起こり得ます。

男性は学ラン、女性はセーラー服といった服装指定が、性自認や性表現に合致せず、苦しんでいるのかもしれません。お子さんの気持ちをじっくり聞いてみてください。

現在多くの中学校では、性と性自認に違和感がある場合、体操服での登校や性自認に沿った制服の着用を認める対応をしています。学校側と協議してみてはいかがでしょう。さらに言えば、学校への相談なしに、誰もができる限り違和感なく学校に行ける環境を用意することが重要です。弁護士会では14日にシンポジウム「LGBTと制服」(情報ダネ!参照)を開催し、この問題を取り上げます。

(佐川民)

●パートナーシップ制度とは

▼Q
最近「パートナーシップ制度」という言葉を耳にしますが、どういうものですか。同性婚とは違うのでしょうか

▼A
日本では東京都渋谷区が2015年、同性カップルを男女の婚姻関係に相当する関係と認める「パートナーシップ証明書」を発行する制度を導入しました。制度は条例に基づき、区の事業者に対して、これを最大限配慮するよう定め、携帯電話の「家族割」が受けられるなど、権利の拡大が図られています。

ただしこれは法律上の結婚(婚姻)とは異なるので、相続や扶養、配偶者控除など税制上の優遇措置、年金のような福祉制度など、結婚を前提にした制度は利用できません。対象者もその自治体(区内)に居住する人だけです。それでも同性カップルに関する公的な制度が初めて登場したことは、性的少数者の人権保障として大きな一歩でした。

類似の制度は、東京都世田谷区、札幌市など、現時点で6自治体にあり、九州でも福岡市長が、パートナーシップ制度を含む支援の充実に向け「踏み込んで検討する」と表明するなど、導入が期待されています。

これに対し、同性婚とは、文字通り同性同士に法律上の結婚を認める制度です。海外では、米国、オランダなど多くの国で認められていますが、日本では同性婚の制度はありません。

現在、性的少数者たちが、日弁連に対し人権救済の申し立てをするなど、日本でも同性婚の制度を求める声もあります。

(石田光史)

●ゲイだと打ち明けられたら

▼Q
親友から「ずっと隠していたけど自分はゲイなんだ」と打ち明けられました。私はこれからどう接すればいいのでしょうか。

▼A
LGBTへの理解は急速に進みつつありますが、まだ差別を恐れて、ゲイなどの性的少数者であることを隠して生きている人が多いのが現状です。

親友が打ち明けてくれたのは、あなたを本当に信頼しているということです。まず「話してくれてありがとう」と伝えましょう。そして、ゲイであるということは、その人のプライバシーの中心をなす大切なことですから、決して親友の同意を得ずに他の人に漏らしてはいけません。それ以外は、今まで通り接すればいいのです。

当たり前のことですが、ゲイの人も、男性なら誰でも好きになるというわけではなく、好みのタイプの人だけを好きになるのは異性愛の場合と同じです。

また万が一、親友とけんかしてしまっても、ゲイであることをばらすと脅すことは許されません。そうした行為は刑法の脅迫罪で処罰されたり、民法の不法行為として損害賠償請求が認められたりする可能性もあります。何より、信頼してくれた親友の心を踏みにじる行為です。

福岡県弁護士会では、毎月第2木曜日の正午~午後3時、LGBT無料電話相談=070(7655)1698=を始めました。匿名での相談も可能で、秘密は守ります。ためらわずにお電話ください。

(秀島美穂)

西日本新聞 10月11日分掲載

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