「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2024年7月18日

裁判費用 払うのはどっち?

▼Q 1年前に知人に50万円を貸し、全く返済がありません。支払う気もないようで、裁判しようと思います。その費用も相手に請求できますか。

▼A 裁判をする場合、請求額に応じた手数料や書類送付のための切手代を裁判所に納めます。弁護士に依頼すると弁護士費用も必要です。敗訴側にこれらの費用を払わせるのが敗訴者負担制度です。

しかし日本では、全面的な敗訴者負担制度は採用されていません。裁判所に納めた手数料などは勝ち負けの割合に応じて敗訴者が負担しますが、通常、費用の多くを占める弁護士費用は原則自己負担です。特に少額請求の場合などは、勝訴しても金銭的に割に合わないこともあります。

これには例外もあります。交通事故やインターネットでの誹謗(ひぼう)中傷など、不法行為に基づく損害賠償を求めるケースです。このような事案では、認容額の10%程度を弁護士費用として加算し、加害者に支払を命じることが一般的です。

日本でもかつて敗訴者負担制度の導入が議論されました。しかし敗訴した場合、相手の弁護士費用まで支払わないといけなくなると、一般の市民や中小企業は、被害を受けても怖くて裁判できないことになりかねません。このため導入は見送られました。

裁判費用の問題は専門的です。事件の種類によっては鑑定費用、執行費用などが必要になることもあります。一方で、加入している保険の弁護士費用特約でカバーできるケースも増えています。弁護士に依頼する際は、費用のことも遠慮なく相談してください。

西日本新聞 7月18日分掲載(宮脇知伸)

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