少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

少年付添人日誌 ―特定少年の原則逆送事件―(6・1月号)

1 事案の概要

私が担当した特定少年の原則逆送事件について報告させていただきます。
事案の概要は、19歳の少年が、共犯者と共謀の上、県外の路上のベンチに座っていた被害者に対し、暴行を加え、被害者の金銭や所持品を強取した強盗事件です。また、逆送後に、窃盗事件(同じ共犯者と路上のベンチで寝ている被害者から財布を窃取)でも追起訴されました。

2 少年審判前の活動について

本件は、県外での強盗事件で現行犯逮捕されていたため、被疑者段階は県外の弁護士が国選弁護人に選任されており、福岡家裁送致後に私が国選付添人に選任されました。当時、特定少年の原則逆送事件を担当されている方を聞いたこともなく、少年事件の逆送事件も経験したことがなかったため、どうしたものかと思いましたが、とりあえず少年と面会していつもの少年事件のように進めてみようと考えました。
実際に少年と面会すると、「こんな子がこんな事件するの?」と思うくらい素直で礼儀正しい少年でした。少年に、法律上、刑事裁判(大人と同じような裁判)を受ける可能性があることや、場合によっては懲役刑もありうることを説明したところ、少年は、自分のやってしまったことの重大さを考えると罰を受けることはしょうがないと話していました。
少年に内省を促すと共に、被害弁償を進めるために被害者と交渉を進めていたところ、被害者から、●万円(被害額の3倍弱)の支払いをしてもらえれば、いかなる処分も望まないとの示談に応じるとの回答がありました。少年の両親は、少年の処分がどうなろうと被害者に対する責任を果たしたいという意思で支払いたいと述べておりましたが、少年は、両親に負担をかけてしまうくらいなら刑務所へ行って責任を果たすしかないと述べていました。しかし、両親や私との面談を通じて、被害者のためにも両親に被害弁償金を立て替えてもらい、そのお金を両親に返すことで今回の件を受け止めようという態度へ変わっていき、少年審判の数日前に示談をすることができました。
また、少年には、示談交渉を通じた振り返りの他、少年自身の問題点へ気づき、今後の生活の計画について記載したノートをつけてもらっており、考えが深まっていく様子がわかるように意見書と共に提出しました。

3 審判

審判では、裁判官からの質問に対して、面会のときに考えたことがしっかり話せていましたが、結論としては検察官送致となりました。
審判後、調査官と話した際に「少年法改正前であれば保護処分が相当だったと思いますが、まだ執行猶予の可能性もありますし」と言われ、少年法改正の影響を感じました。

4 少年審判後の弁護活動

検察官送致の決定がされると、少年審判規則第24条の2の規定により、罪となるべき事実の他、刑事訴訟法第60条第1項各号の事由があること等が告げられます。そして、少年鑑別所への観護措置は、裁判官のした勾留とみなされ、引き続き身体拘束が継続することになります(みなし勾留。少年法45条4号前段、同67条7項)。
本件では、少年の身柄が鑑別所から拘置所へ移送され、10日後に起訴されました。その後、別件の窃盗事件でも追起訴されました。
起訴されて以降、少年は20歳となりましたが、裁判では少年の氏名について秘匿する(「A」と呼称する)申し合わせがなされました。
窃盗事件についても示談が成立し、少年審判で提出した意見書とその添付資料と共に示談書を証拠請求して、酌量減刑を適用のうえ、執行猶予付き判決を求める弁論を行いました。
判決は、懲役3年、執行猶予4年(保護観察付)となりました。

5 さいごに

本件は、仮に少年審判で少年院送致されていたとすれば、結果的にそれより早く社会復帰したケースとなりました。本件では、保護観察が付されましたが、保護観察が付されない場合は、執行猶予という抑止力(重み)だけで少年の更生を期待しなければなりません。
少年にとってどのような処分が良いかは事案ごとに変わると思いますが、付添人としては、どのような処分になるとしても、要保護性の解消に向けた付添人活動をしなければならないと改めて思いました。

武 寛兼

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