少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(29・8月号)

1 はじめに

去る3月、指導担当の先生にご指導を頂きながら、初めての少年付添人を担当いたしましたので、活動内容等をご報告いたします。

2 事案の概要

少年の非行事件は2件ありましたが、特に問題となったのは、当時14歳の少年が、1学年後輩の女子生徒に、胸部を露わにした写真をLINEで送らせ保存していたという事案です。

3 活動内容

(1) 少年との面会

観護措置決定翌日の午前に初回面会に行きましたが、少年を一目見た印象では、今回の事件を反省していると感じました。

しかし、少年から今の気持ちを聴くと、「こんなことしなければ鑑別所に入らずに済んだ」、「早く出てお母さんや友達に会いたい」など、自分の行為への反省というより、現在の自分の境遇を嘆いているに過ぎませんでした。

さらに話をすると、少年は、自分の行動によってどのようなことが起こるか、相手がどのように感じるかなどを想像することなく、目先の楽しさだけを考えて行動してきたのだろうと予想できました。

このような少年を変えるには、審判までの間に自分の行動をしっかり振り返らせ、それがどのように今の状況につながったか、被害者がどんな気持ちになったかなどを、じっくり考えさせることが必要と感じましたので、少年には、これまでの自分の行動やその結果などをじっくり振り返るよう伝えました。

(2) 母親との面談

両親は離婚しており母親に育てられていたことから、まずは母親に話を聴きました。

話を聴くと、少年が母親から十分な愛情を受けずに育ったことが容易に想像できました。母親の言葉は、「少年の自業自得」「自分ではしっかり監督できない」「しばらく少年院に入った方がよい」など、少年に対する思いやりから出てくるものとは思えない言葉ばかりだったからです。

母親には、指導担当の先生から、現在の少年の境遇や不安な気持ちを伝え、少年を大切にしてあげるよう話をされました。

(3) 調査官の意見

面会を繰り返し、私と指導担当の先生は少年の十分な反省を感じていましたが、調査官は我々の印象よりも厳しい意見を述べていました。その中で、少年は自分より弱い人間を支配することで自己肯定感を高めようとする傾向が強いといった指摘もされていました。

このような調査官の意見に触れ、少年には、相手の気持ちを想像する力などをさらに涵養することが必要であると再認識しました。

(4) 審判に向けて

審判が近づいた時期には、少年に対して色々と質問しました。

自分のした行動について、なぜしてしまったのか、何が楽しかったのか、悪いことだと思わなかったか、なぜ我慢できなかったか、それによって誰がどのような気持ちになったかなど、自分の行為やその結果について質問し、そのことについて深く考えてもらうことで、少年の反省が、より具体的かつ本質的なものになってくのを感じました。

4 審判当日

少年は、自分の思いを自分なりの言葉で裁判官に伝えましたが、裁判官からの厳しい言葉に涙ぐむ場面も見られました。

もっとも、鑑別所に入ってから審判を迎えるまでの間に、少年自身が大きく変わったと感じましたので、おそらくこのときの涙は、自分の境遇に対する悲しさではなく、被害者への謝罪の気持ちや、自分を見守ってくれている周りの人たちへの感謝の気持ちから出たものだと思います。

審判の結果は保護観察処分でした。

5 最後に

少年には可塑性があるといいますが、そのことは、弁護士が付添人活動をする上での、1つの大きなやりがいであるとともに、責任でもあります。

今後、また少年事件に携わるときには、そのことを肝に銘じ、励んでいきたいと思います。

鶴崎 陽三

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