少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。
付添人日誌 はじめての付添人活動(26・7月号)
1 はじめに
66期の中村有希と申します。先日、登録後初めての少年事件を担当しましたので、ご報告いたします。サポートを甲木真哉先生が担当してくださいました。
罪名は、道路交通法違反(共同危険行為)で、クリスマスの夜に、仲間と天神をバイクで走行し、事件から4か月後に逮捕された事案でした。
2 3度目の正直
少年は、窃盗で2回観護措置になったことがあり、今回こそは少年院だと、ひどく落胆していました。
ただ、少年は2回目の保護観察を受けてから、真面目に就労するようになり、保護観察が良好解除されたという事情があり、就労先も引き続き雇用するとの意向でした。
そこで、今回も保護観察による更生が可能であると考え、それに向けた付添人活動を行うことにしました。
3 被疑者ノートの威力
先に逮捕された共犯者の供述は、少年の認識と異なる部分がありました。取調べで誘導がなされていないかを確認するため、甲木先生からのアドバイスで、被疑者ノートを差入れることにしました。
前回、前々回の逮捕のときは、投げやりな態度で取調べに臨んでしまい、取調官の誘導にのった調書になっていたそうです。
今回は、被疑者ノートを毎日書くことにより、事件をしっかりと思い出し、取調べに真剣に望むことができたと言っていました。
危険な走行態様や周囲への迷惑を考えるきっかけにもなりました。
4 少年の涙
少年が、1度だけ私に涙をみせたことがあります。
「お父さんが、『最近は頑張っていた』って言っていたよ。」と伝えると、少年は思わず涙していました。
前回も前々回も、調査官から会話が少ないと指摘された親子なのですが、今回初めて少年は両親に手紙を書き、自分の気持ちを伝えました。
両親が少年の頑張りを見てくれていたことを知って、少年は少しだけ自分に自信が持てたようです。
5 審判の日
少年は、「自分ではもう立ち直ったつもりでいたけど、甘さがあったことを知ることができたので、今回は捕まってよかった。」と話すことができました。
逮捕当初は、ただ少年院に怯えるだけでしたが、逮捕されてよかったと言えるくらい反省することができました。
しかし、結果は厳しく、処分は少年院送致でした。
6 「抗告はしません、行ってきます。」
審判の翌日、少年は落ち込んでいると思うと、とても暗い気持ちでしたが、少年は予想外に明るい顔をしており、抗告はしないとのこと。
思わず、「少年院になってしまったね、ごめんね。」と言うと、少年は、「そんなに落ち込まないでください。覚悟していました。」と逆に私を励ましてくれました。
そして、少年院では真面目に生活して、最短で出られるよう頑張ると約束してくれました。
季節が変わる頃、少年は戻ってきます。立ち直っていく姿を見守りたいと思います。
7 サポート研修を終えて
少年事件は、短期間のうちにやるべきことが多いので、優先順位や進め方にとても悩み、度々、甲木先生にアドバイスを頂きました。
ご指導してくださった甲木先生はもちろんのこと、充実した研修体制を整えてくださった先輩方に、心から感謝申し上げます。
少年法改正に伴い、サポート研修の存続が危ぶまれておりますが、サポートの先生との共同受任により学ぶ機会がなくなってしまうとすれば、とても残念です。
8 次回の付添人研究会は8月5日(火)です!
私は付添人研究会の幹事をしております。研究会では、事件を疑似体験し、多くの先生の知恵や経験を伺うことができるので、新人には絶好の勉強の場です。
今後も、より充実した研究会にできるよう努めて参りますので、皆様の付添人研究会へのご参加、心よりお待ち申し上げております。
中 村 有 希