少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌 初めての付添事件(27・11月号)

1 はじめに

平成27年5月に担当いたしました初めての少年事件について報告いたします。

サポートとして川原秀範先生にご指導いただきました。

2 事案の概要

罪名は窃盗と道路交通法違反であり、深夜に警察署の前で、仲間に誘われるがままに、仲間とともに盗んだ原動機付自転車で信号無視・蛇行運転を無免許で行って現行犯逮捕された、というものでした。

また、自転車の窃盗も多数回行っており、補導も何度もされていました。

3 活動

(1) 少年について

犯行態様から明らかなように、少年は物事を深く考えることが苦手なようで、実年齢よりも幼い印象でした。

また、少年は初めて観護措置をとられたことで、こんな不自由なところには二度と来たくない、という思いはありましたが、それ以上に非行仲間と手を切ってまで更生したい、という意識はあまりないようでした。

なお、面会の際に少年自身について色々と尋ねたり反省文等を書かせたりしたのですが、今考えると更生のためにどうすればよいか、という意識が先走り、少年との信頼関係の構築が二の次になっていたかと思います。

そのため、後に調査官との面談でも「少年に具体的な反省はなく、友人に流されていることも無自覚、生活の建て直しを安易に考えている」といった問題点を指摘されましたが、それをどのようにしたら少年が自覚できるのかわからないまま審判を迎えることになってしまいました。

(2) 環境について

少年の両親は鑑別所に毎日面会に行くなど、家族仲は非常に良好でした。

両親は当初、少年の非行についての問題意識が低く、指導・監督能力にはかなりの疑問がありましたが、次第に少年の更生のために何ができるのかを真剣に考えるようになっており、意識の変化が見られました。

また、学校側も非常に協力的であり、教師と両親や少年との関係も良好であったことから、少年の今後の更生が期待できる環境は整っていました。

(3) 窃盗被害者について

なお、窃盗の被害者4人全員が、少年の反省文を読まれた上で、被害弁償は不要であり、更生を期待するので厳罰は望まない、との意を示して下さいました。

少年にもその旨伝えましたが、すぐには無理でもいつかはその気持ちが伝わってくれれば、と思います。

(4) 審判について

結果は保護観察処分と予想通りのものでした。

しかし、審判の中で少年自身がつたないながらも自らの言葉で事件や今後について話すことができており、少年にも何らかの変化があったのかな、と少年の今後に期待が持てました。

4 感想

手続きに戸惑い、少年との関係に悩み、と手探り状態の1ヶ月であり、あっという間に過ぎてしまいました。

もっとよい関係が少年と築けたのではないか、との思いはありますが、これからもその気持ちを忘れず、誠実に少年と向き合うことで、よりよい付添人を目指して精進していきたいと思います。

最後になりましたが、ご指導してくださった川原先生はもちろんのこと、サポート体制を整えてくださった諸先生方に心より感謝いたします。

小 宮 香 織

目次