福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2021年3月号 月報

あさかぜ基金だより

月報記事

会員 宇佐美 竜介(73期)

ごあいさつ

このたび、あさかぜ基金法律事務所に入所しました、所員弁護士の宇佐美竜介と申します。

私は東京出身ですが、大学卒業後に裁判所に採用され、30年以上九州の裁判所において裁判所書記官として勤務しました。司法修習は、裁判所時代の初任地である佐賀県で行い、弁護士として、福岡県に戻ってまいりました。

私の趣味

ランチの食べ歩きで、退職直前の六本松で112軒、退職から修習開始まで総合図書館通いをしていた西新で115軒、実務修習地の佐賀で57軒(コロナの影響で予定の半分以下ですが・・・)ほど巡りました。2月15日現在で天神34軒(ラーメン屋のみ)足らずですが、記録をしっかり伸ばしたいと思います。

あさかぜ基金法律事務所に入所した理由

裁判所時代に、某支部において、地元の人の司法アクセスが良くない、事件屋が暗躍している等の話を聞き、使命感に駆られる思いをしたのがきっかけです。また、公務員という立場は中立公平という制約があり、本当に気の毒な人に手を差し伸べられないことに忸怩たる思いを抱いていたこともあり、自分の人生は安泰のままで終わっていいのだろうか、還暦間際ですが、人生最大の冒険を敢行するならば、司法アクセスが悪くて本当に困っている人の中に入っていこうと考えたからです。

あさかぜ基金法律事務所の紹介について

あさかぜ基金法律事務所は、司法過疎地域に赴任する弁護士を養成するため、弁護士会が支えている都市型公設事務所です。所員弁護士は、1年半から2年程度の養成期間を経て、九州の司法過疎地域に赴任することになります。

抱負

私は、令和2年12月17日(昨年の福岡弁護士会の一斉登録日)から、あさかぜ基金法律事務所での仕事を開始しました。裁判所の実務経験が多いからと思われるかも知れませんが、今まで生きてきたのとは全く別の世界であって、自分は何と世間を知らないのだろうということを痛感させられております。

これからは、先輩弁護士から多くのことを学び、生涯勉強という言葉を大切に、精進していきたいと考えています。残りの人生、一期一会(食べ歩きもその一環)を大事にしたいと思います。

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2021年2月号 月報

ジュニア・ロースクール2020in筑後

月報記事

法教育委員会 委員 渡部 裕太郎(71期)

1 はじめに

令和2年11月29日、福岡県弁護士会筑後部会会館において、「ジュニア・ロースクール2020in筑後」がZoom開催され、筑後地域の中高生13名にご参加いただきました。筑後部会法教育委員会では、例年、筑後地域の中高生を対象としてジュニアロースクールを開催しておりますが、コロナ感染対策のため、今回は初のZoom開催となりました。

そこで、本稿では、当日の様子等を、Zoom特有の技術的な観点を交えながらご報告させていただきます。

2 会場選択

会場選択について、当初は、臨場感を持たせるため、久留米大学の模擬法廷において弁護士が模擬裁判を実演し、その様子をZoomで中継することを検討していました。しかし、久留米大学では、Wi-Fiが使用できなかったため、Wi-Fiが使用できる弁護士会館が選択されました。

3 当日の流れ
(1) 題材

今回は、殺意の有無が争点となる刑事事件が題材であり、事案は、被告人が、自分の交際相手を略奪した被害者の腹部を果物ナイフで刺してしまったという殺人未遂事件でした。なお、登場人物は、某国民的漫画がモチーフとなっています。

被告人の言い分は、話し合いをするために交際相手の自宅を訪問したところ、被害者が出てきた。被害者は、「お前のものは俺のもの」「お前のくせに生意気だ」等と威圧をしてきた。そこで、被害者を怖がらせるため、台所に置いてあった果物ナイフを手に振り下ろしたところ、被害者の右腕を傷付けてしまった。それに怒った被害者が憤慨して近付いてきたため、被害者を遠ざける目的でナイフを前に差し出したところ、腹部にナイフが刺さってしまった。ナイフの近くには万能包丁も置いてあったが、包丁はさすがに危ないと思ったのでナイフを選んだ等というものでした。

(2) 模擬裁判

弁護人、被告人、検察官、被害者、目撃者、裁判官の役に扮した弁護士が、人定質問から被告人質問までの流れを実演しました。また、技術的な面では以下のような工夫を行いました。

① 「法廷の様子カメラ」の活用
実演にあたっては、弁護人席、検察官席、裁判官席及び証言台の上にZoomにログインしたパソコンをそれぞれ設置し、各担当者がカメラの前でセリフを話しました。また、証言台パソコンの前では、犯行状況の再現等も行いました。
もっとも、それだけでは、基本的に各弁護士の顔しか見えず、臨場感に欠けるため、Zoomにログインしたスマートフォンを「法廷の様子カメラ」として使用し、生徒が全体の様子も見ることができるような工夫しました。
また、集音の方法ですが、各パソコンのマイクをオンにしてしまうとハウリングが生じるため、「法廷の様子カメラ」用のスマートフォンでの集音に一元化しました。

模擬裁判の様子"

模擬裁判の様子

Zoomの画面(証人尋問の様子)

Zoomの画面(証人尋問の様子)

② 「チャット機能」の活用
模擬裁判を見ながら生徒が疑問に感じたことをその都度質問できるよう、チャット担当の弁護士を配置しました。また、参加生徒には、資料を事前に送付していましたが、紛失や不足の可能性もあるため、チャット上に資料のデータをアップするようにもしました。

(3) グループディスカッション

模擬裁判を見た後、生徒は4つの班に分かれ、裁判官の立場で殺意の有無と量刑を検討するための議論を行いました。

議論にあたっては、Zoomの「ブレイクアウトルーム」機能を活用し、班のメンバーだけで議論ができるようにしました。そして、各班には、担当弁護士が1名参加し、議論の進行を行いました。

議論の様子についてですが、どの班でも活発な議論が行われました。当初、対面でなければ発言に消極的になるのではないかとの懸念がありましたが、それば杞憂でした。

私が担当した班の生徒達は、「ナイフを使ったからといって安易に殺意を肯定してよいのか」という疑問から出発し、攻撃の回数、被害者の行動、被疑者と被害者の関係性、凶器の選択等の観点から事案を深く分析することができていました。その結果、被害者の行動が原因で偶発的にナイフが刺さった可能性がある。被告人は昔から被害者にいじめられていて、強く反抗できない立場にあり、殺意までは抱かないのでないか。殺意があれば、ナイフでなく包丁を選択するのではないか、何度も攻撃を加えるのではないか等の理由で「殺意なし」と判断し、傷害罪で懲役2年という結論になりました。

また、議論は、予定されていた45分をほとんど全て使い切りました。

<6>(4) 各グループの「判決」の発表

4班あったうち、殺意ありが2班、殺意なし2班で結論が2分されました。
また、班によっては、執行猶予を付けるか否かについても深く議論したところもありました。

4 さいごに

Zoom開催は初の試みでしたが、特段のトラブルなく、無事に成功で収めることができました。参加生徒達からのアンケートも好評で、特に、被害者役の先生の演技力は大好評でした(松﨑先生、本当にありがとうございました)。

また、ジュニアロースクールに限らず、今後、Zoomは他の弁護士会の活動にも活用できるのではないかと感じました。
最後に、Zoom開催にあたって、ご尽力していただいた先生の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

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紛争解決センターだより 新型コロナ・事業者賃貸借ADRのご案内

月報記事

紛争解決センター運営委員会 委員 松村 達紀(65期)

1 コロナ対応(災害)ADRを立ち上げております

残念ながら昨年の年末より新型コロナウイルス感染者の増加に歯止めがかからず、令和3年1月8日より、東京・埼玉・千葉・神奈川(本原稿執筆時点)を対象として緊急事態宣言が出されております。福岡への影響がどのようなものとなるのか分からないところがありますが、飲食・観光事業者を中心に、甚大な影響が生じることは否定できません。

当センターは、令和2年6月8日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する法的紛争解決のために「コロナ対応(災害)ADR」を立ち上げておりますが、今一度、皆さまに積極的な利用をお願いしたく、月報にてアナウンスをさせていただきます。

2 事業者の賃貸借問題に積極的に取り組みます

コロナ対応(災害)ADRは、新型コロナウイルス感染拡大に関連する民事紛争であれば、何でも申し立ていただいて構いません。

そのような中で、日弁連としては、特に、中小企業・小規模事業者において、「賃貸借契約」に関する法的問題が深刻化していることを踏まえ、実態・統計的な傾向の把握のために、令和2年12月1日より、「賃貸借問題相談キャンペーン」1を実施しております。

具体的には、事業者に対してこれらの問題の相談窓口として、「ひまわりほっとダイヤル」を周知・案内するとともに、コロナ対応(災害)ADRの積極的な活用を図るという内容になっております。

今回の緊急事態宣言では、特に飲食店に時短営業等を求める内容が中心となっており、賃貸借問題が深刻化することは避けられません。一般の事業者の方が、直接(弁護士のサポートなしに)、コロナ対応(災害)ADRに申立てを行うことには相当程度のハードルがあると思われますので、ひまわりほっとダイヤルの相談担当の先生を含め、当会会員の先生方におかれましては、コロナ対応(災害)ADRの積極的な案内・活用をお願いいたします。

3 コロナ対応(災害)ADRの内容

最後に、コロナ対応(災害)ADRの内容を再度、ご説明させていただきます。

(1) 対象事件

上記のとおり、新型コロナウイルス感染拡大に関連する民事紛争であれば、何でも申し立ていただいて構いません。特に、休業期間中の賃料の取扱いや賃料減額交渉等を含めた賃貸借問題に関しては、積極的な活用をご検討いただければと思います。

(2) 申立て方法

一般のADRでは、法律相談を受けた民事事件について、申立書や証拠の書類等を添えて申立てをしてもらっていますが、コロナ対応(災害)ADRでは、法律相談を受けていない事件も受け付けます。

また、申立てが簡単にできるよう、広報チラシの裏面にある申込書に必要事項を記入していただいて、天神弁護士センターに郵送又はファックスしていただくか、申込書の郵送やファックスができない方は、電話やメールによって申込みをしていただければ、後日担当弁護士が申立てをサポートするという制度もあります。

(3) 費用

申立て費用は、無料です。 紛争が解決した場合には、原則として、チラシ記載の基準に従い、成立手数料を当事者で折半にて負担いただきますが、事案によっては、成立手数料を減免することもあります。

1 日弁連のキャンペーンは、令和3年2月末までの予定。当会のコロナ対応(災害)ADRは、その後も継続予定。

紛争解決センターだより 新型コロナ・事業者賃貸借ADRのご案内
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2021年1月号 月報

あさかぜ基金だより

月報記事

あさかぜ基金法律事務所 石井 智裕(72期)

福岡に来て1年たちました

あけましておめでとうございます。

私が福岡に転居し、あさかぜ基金法律事務所に入所してから1年がたちました。

新型コロナウイルスの影響で研修が行われる時期や方法が変わり、破産手続の進行が遅かったり、依頼者との打合せも電話やメールで行ったりと大変な1年でした。すでに修習や就職活動が終わっていてよかったと思っています(いま修習中の人、就活中の人ごめんなさい)。

福岡に来てよかったと思ったことは、大きい書店・図書館が近くにあることです。私の出身地では書店に行くには隣町まで行く必要があり、その本屋も小さく法律書は取り寄せなければなりませんでした。福岡に来て、歩いていける距離に大型書店があることに幸せを感じております。また、大きな図書館も近くにあり、個人で購入することが難しい全集なども読むことができ、頻繁に通っています。

福岡に転居して苦労したことは、言葉が違うことです。日本語では文末がとても大切なのに、福岡の言葉は語尾が地元である千葉の言葉と異なっていて、依頼者や共同受任の先輩弁護士の言葉がよくわからなかったことです。また、同じ言葉でも意味合いが少し違うと感じることがありました。

所員の入れ替わり

私があさかぜ基金法律事務所に入所したときは弁護士は6名いました。けれども、今は4名となりました。

昨年6月には小林弁護士が飛鸞ひまわり基金法律事務所(平戸)に赴任しました。小林弁護士は依頼者への対応が丁寧で、たくさんの依頼者から信頼を集めていました。私も早くそうなれるように心がけています。

昨年12月には西原弁護士が壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任しました。私は入所して以来、西原先生の隣の席に座って執務をしていましたので、疑問点があると西原弁護士とよく相談して事件を進めていました。この原稿を書いているときは、まだ西原弁護士が退所してから間がないので、なかなか西原弁護士がいないという実感がわいてきません。

そのうえ、あさかぜ基金法律事務所に長く勤めていた事務員さんが辞め、事務員さんが入れ替わりました。事務所の機材が不調になっても、どこに問い合わせてよいのかわからなくなったりと、事務員さんの存在の重要性をあらためて感じました。

今月からは新しい弁護士があさかぜ基金法律事務所に加わる予定で、いま原稿を書いているときは、新しく入ってくる所員が使うロッカーを空けるため、過去の弁護士の事件記録をロッカーから出し、別の場所に移動させたり、法人登記の仕方の説明書をつくったりしています。次回のあさかぜ基金だよりは新しく加入する弁護士の自己紹介の予定となっています。ご期待ください。

今年の抱負

気がつくとすでにあさかぜ基金法律事務所で養成を受けられる期間が半分も過ぎてしまっています。

いまだに事件の処理に悩み、先輩に相談しつつ事件を進めているので、あと1年たったとき、本当に弁護士過疎地にて一人で事務所の運営ができるか不安ではあります。

けれども、日々の積み重ねでしか成長はできないのですから、日々の業務から少しでも多く学べるよう努めていくつもりです。

本年も引き続きのご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

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法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告

月報記事

法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)
北九州部会法律相談センター運営委員会 委員長 田篭 亮博(60期)
筑後部会法律相談センター運営委員会 委員 田中 文(65期)

第1 はじめに

令和2年11月に、福岡、北九州、筑後の3会場で福岡県法律相談合同研修会が開催されました。同研修会は、自治体等の相談窓口担当者の法律知識や相談の技術・知識の習得を目指しています。

研修会を主催する「福岡県法律相談連絡協議会」は、1997年(平成9年)、福岡県弁護士会、福岡県、福岡市、各自治体、社会福祉協議会が呼びかけ人となり、設立されました。設立趣旨には、「各相談機関が連携を取りながら、より早く、より適切に助言し、問題の解決まで住民を導くことができるトータルなシステムづくりを行い、相談機関同志の相互協力によって一層充実した相談サービスを提供すること」とあります。その目的を達成するための重要な活動として、毎年、県内4地区において、研修会を開催しているものです。

以下、福岡、北九州、筑後の各研修会について報告します(筑豊地区については地元自治体の意見もふまえ本年度は開催を見送りました。)。

第2 福岡会場(池田)
1 概要

11月19日に福岡県弁護士会館(2階大ホール)にて福岡県法律相談合同研修会(福岡地区)が開催されました(司会進行:弓幸子業務事務局長)。

福岡地区では、日常の弁護士業務でDV被害相談に精通しておられる石本恵会員(福岡部会)に「DV被害者の法律相談を受ける際の工夫・留意点」と題して講演をお願いしました。当日は、DV被害の相談を受けることの多い相談窓口の担当職員をはじめ約40名にご出席いただきました。

2 講演の内容

講演の内容は、基本的な概念の整理から始まり、相談を受ける際の留意点、手続に関する説明に及ぶ実践的なものでした。石本会員の人柄を表すようなわかりやすく語りかけるようなお話ぶりに、参加された皆さんも、1時間半の講演の最後まで集中して聴講されていました。

まず、DVの代表的な類型(身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力、社会的暴力)と内容(具体例)の説明があり、その後、実際に相談を受ける際の留意点の教示がなされました。DV相談の場合、事案によって緊急性が異なり、緊急性の度合いによって対応が異なることを理解してもらいたいとの指摘がありました(緊急性が高い事案の場合は安全の確保が優先、緊急性が中程度の事案の場合は安全性の確保とともに今後の生活再建の準備、緊急性が低い事案の場合は今後の生活再建準備を中心に助言する。)。

ヒアリングすべき事項としては、(1)暴力の類型と内容、時期、頻度、原因、(2)家族構成、婚姻生活のライフイベント、(3)職歴、収入、生活費の支払状況、(4)財産、(5)相談者の意思(別居するか否か、離婚するか否か、その時期等)があげられました。留意点として、DV被害者は、被害を受けていることを第三者に申告しない(隠す)ことや、そもそも被害を受けているという自覚を持っていないことがあるので、事実と異なる説明がなされないよう配慮したり、暴力の類型と例を示して確認したりすることが有益であるとの指摘がありました。ある事実が発生した時期が思い出せない場合には婚姻生活のライフイベントと関連づけて質問することも有益であるとのお話があり、この点は通常の離婚事件の場合にも参考になる点でした。

その他、DV被害者のための法制度の概要(一時保護、警察との連携、保護命令申立て)、離婚に関する流れ(離婚協議、調停、訴訟)の説明とポイントが示されました。

会場からは、証拠の収集にあたって考慮すべき点について質問がなされ、石本会員からは、ご自身の経験に即した実効的な証拠収集方法について回答がなされました(たとえば、SNS関連の証拠については、相談を受ける側がデータとして受信して証拠化するのではなく、スマートフォンの画面を撮影して証拠化することが、より正確な記録となり得るなど)。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告 法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
3 法律相談事業の現状に関する報告

石本会員の講演の後、法律相談センター運営委員会副委員長(福岡部会小委員会委員長)の井手上治隆会員より、主として福岡地区における法律相談事業の現状(特に新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急事態宣言発出以降の対応、豪雨災害への対応等)について報告があり、派遣相談先を中心とした行政機関等と弁護士会との連携の必要性について共通認識の重要性をあらためて申し上げました。

第3 北九州会場(田篭)
1 はじめに

11月12日、北九州のウェル戸畑にて法律相談合同研修会が開催され、平尾真吾会員(北九州部会)に「身寄りのない高齢者に対する支援」をテーマに、柴田裕之会員(北九州部会)に「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」をテーマに講演をして頂きました。今年は各役所から23名の方に参加いただきました。

2 「身寄りのない高齢者に対する支援」

平尾会員は成年後見について部会きってのエキスパートになりますが、手持ち成年後見事件が40件を超えていると聞き驚きました。平尾会員からは身寄りのない高齢者の問題として、(1)緊急連絡先の確保、(2)入院費・施設利用料の支払い(特に保証人の問題)、(3)医療同意の問題(特に意識不明の医療的な同意)、(4)死亡時の遺品引き取りや葬儀の問題について話をしていただきました。私は知りませんでしたが、この分野については「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」山梨大学・山縣教授の研究が参考になると紹介をされました。身寄りのない高齢者の場合、どうしたらよいか実務上困るケースが多いと思います。困った場合はまず、この山縣研究を見てみるとヒントがあるかもしれません。もっとも、まだ答えが定まっていない分野でもあるので平尾会員も手探りで対応しないといけないケースもあるということでした。また、平尾会員が経験された具体的な事例に基づいたケース紹介もされましたが、大変勉強になりました。

3 「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」

柴田会員は北九州部会の高齢者・障がい者の分野で中心的な役割を担ってくれています。柴田会員からは、刑事事件において知的障害がある方の累犯率・再犯率は高い、これまでの弁護活動では弁護士も知的障害があることに気づかずに福祉的支援につなげることができていないケースが多いとの話がありました。知的障がいがある方は、捜査官の言うことに迎合してしまったり、自分の言いたいことがうまく伝えられない、刑務所でも罪を償っているという認識がないなどの特性があるとのことでした。知的障がいがある方が再犯を繰り返さないよう私たち弁護人が気づくこと、そして、福祉職と協力して環境を整えることが大切だと学びました。また、実際のケースをもとに事例紹介もあり、研修を受けている方も興味をもって聞いていました。

4 アンケート結果も好評で有意義な研修になったのではないかと思っています。来年も新たなテーマで開催したいと思います。

第4 筑後会場(田中)

11月27日、筑後部会で開催しました法律相談合同研修会についてご報告します。コロナ対策のため、久留米シティプラザ大会議室という従来よりも広い会場を確保の上、受付で手指消毒・体温測定を行い、会議室の扉や窓は開放したままでの実施となりました。

第1部は白水由布子会員(筑後部会)に「DVにまつわる法的問題」というテーマでご講演いただき、第2部として参加者の方々と弁護士の意見交換の場を設けました。

まず第1部ですが、DVの定義にはじまり、DVの構造、つまり、力で相手の嫌がることをして相手がこれを避けるだろうことを見越して加害者にとって都合の良いことをさせるコントロールであることを押さえた上で、相談を受ける際の心構えについて説明がされました。DV事件は被害者の安全第一であることや、住所の秘匿に留意すること、被害者にとって相談しやすい雰囲気を作ること等に加え、「助けてあげるという気持ちにならない(助けてあげているというのは上下関係であって、対等な関係ではない)」「解決は本人の意思で(当事者ではないのだから代わって決めてあげることはできない)」という点には、参加者の多くがうなずいておられました。また、被害者の行動のタイミングを制限せず、なにごとも自分で決めていいんですよ、という場面を繰り返すことが重要である、という点については、被害者を再びエンパワーメントしていくことへつながると感じました。

続いて第2部の意見交換会ですが、最初こそ参加者の方々は遠慮されている様子でしたが、徐々に場が温まり、「(1)客観的にはDVを受けていると思われるが、相談する気のない人に対し何ができるか」「(2)成人男性がその父親から暴力を受けている場合どうしたらよいか」といった質問が次々と飛び出しました。まず(1)については、その気になったときに相談できる制度等についての情報はきちんと示し、機が熟すのを待つしかないのではないか、といった回答のほか、無理やり引き離した場合には元に戻ってしまうこともある、といった経験談も聞かれました。(2)については悩ましい質問でしたが、被害者が何を望んでいるのか、家を出られないのであればその理由はどこにあるのかを探りつつ必要な支援を具体化していくのが良いのではないか、という回答がされました。

そのほかにも多数の質問が出され(紙面の都合上、ほんの一部しかお伝え出来ないのが残念です)、盛況のうちに終了となりました。

第5 最後に

弁護士会にとって、各地域の自治体等の皆様と交流することは、市民への法的サービスの拡充に必須の協同作業と考えます。今後も、ニーズに応える充実した研修会を企画・実行するとともに、日常的な情報交換についても意識的に取り組んでいきたいと思います。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告 法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
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