少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(4・7月号)

第1 はじめに

私が国選付添人として担当いたしました、詐欺事件についてご報告させていただきます。

第2 事案の概要

1 非行事実の概要

本件少年が、インターネット上のゲームアカウント売買サイトを利用して、ゲームアカウントの売買代金名目で現金をだまし取った詐欺事案である。

本件少年は、余罪として、同様の詐欺を50件ほど行っていた。また、アルバイト先同僚の財布から現金と免許証を盗み、免許証は上記詐欺行為を行う際に、被害者を信用させるために提示していた。

2 本件処分について

家裁送致となり、在宅観護処分が下された。裁判官とのやり取りから、在宅観護になった理由は、余罪の被害弁償の便宜のためと考えられる。

最終的には、被害届が提出された被害者7人との間で示談が成立し、保護観察処分となった。なお、余罪の被害者は関東や関西在住であったため、主に電話による交渉となった。

3 本件少年について

本件少年は、専門学校に通う大人しい学生であり、前科前歴もない。

本件少年は、当初アルバイト代をスマホゲームへの課金に充てていたものの、徐々にヒートアップした結果、詐欺を始めてしまった。詐欺により得た金銭は、課金、洋服代そして交際費等に全て使用した。

第3 活動の概要

1 被疑者段階

本件少年との接見、本件被疑事実の被害者との示談交渉を行った。

2 家裁送致後
(1) スマホ依存症の克服

調査官とも協議した結果、本件少年には、スマホ依存症の疑いがあったため、同依存症について書かれた『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン)を紹介し、感想文を書いてもらった。

また、本件少年がスマホを触る時間を少なくするため、夜間は両親にスマホを預かってもらい、両親からの監視を強化してもらった。

(2) 被害弁償

被害届が出された余罪について、示談交渉を行った。なお、本件少年は、初回接見時から「反省している」、「被害弁償を進めてほしい」と一貫して述べていたものの、他人事として捉えている、うわべだけの反省を述べていると感じる場面が見られた。

そうしたところ、被害者の1人が本件少年と直接電話で話したいとの希望を述べたため、本件少年の内省を深められる機会と考え、私も同席のもとで本件少年と被害者との電話会議を持った。電話会議後、本件少年の発言の中で、被害者がどういう心情なのか具体的に考えられるようになったと感じられる場面があったため、意義があったのではと考えている。

第4 審判後

本件審判後、2件の余罪について示談交渉をした。保護司との面会は、真面目に取り組んでいる様子だった。また、事件から半年後、本件少年から第一志望の大学の編入試験に合格した旨の報告を受けた。

第5 最後に

保護観察処分となったこともあり、本研究会までは、付添人の活動としては十分かと思っていました。

もっとも、アドバイザーの知名先生から「依存症はストレスが原因であるから、本人がそれを自覚しているか、原因は結局何だったのか。親の過干渉にも原因があるのではないか。」とのご指摘をいただき、他にもやれることはなかったか、親からの監視を強めることになったのは逆効果ではなかったかと考え、本件について振り返る貴重な機会となりました。

上村 慧

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