「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年1月13日

交通事故の賠償請求いつまで

▼Q 交通事故に遭ってかなりの年数がたちました。消滅時効というものがあると聞きました。もう賠償請求はできないでしょうか。

▼A 交通事故による損害のうち、車の修理費やレンタカー費用などの物的損害に関し、賠償を求める権利が消滅する「消滅時効」の期間は事故から3年です。事故後すでに3年以上経過している場合、物的損害については相手に請求できないケースが多いでしょう。

一方、治療費や慰謝料など人的損害に関する賠償請求権の消滅時効期間は、2020年4月の改正民法施行により、3年から5年に延びました。新法が適用されるのは「20年4月1日時点で時効が完成していない場合」です。ご質問のケースでも、昨年4月1日時点で事故から3年たっていなければ、請求できることがあります。「交通事故の時効は3年と聞いていた」と諦めるのは要注意です。

また、すでに時効期間が過ぎたと思っていても、時効期間の途中で相手側がその責任を認めたといえるような場合には、物的・人的損害のいずれも請求できることがあります。ひき逃げなど事故時には分からなかった相手方の情報が後で判明すると、時効期間はその時点から進行するので、結果的に請求可能な期間は長くなります。

このように、時効制度は複雑です。いつから時効が進行するのか、どのような場合に途中で相手方が責任を認めていたといえるのかなど、専門的な判断が必要となります。だめだと思われていた請求が可能になることも少なくありません。
判断に迷われたら、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

西日本新聞 1月13日分掲載(神田昂一)

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