「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年1月27日

自動車事故での相殺処理とは

▼Q 先日、自動車同士の物損事故を起こしました。修理費は私の車が50万円、相手は30万円。過失割合は50対50です。私は、いくら支払ってもらえるでしょうか。

▼A まず、相手はあなたに25万円(50万円の50%)、あなたは15万円(30万円の50%)の損害賠償をする必要があります。こうしたケースでは、あなたか相手のどちらかが相殺を認めれば、それぞれ15万円分の賠償義務が消滅します。その結果、あなたは相手から10万円を支払ってもらえ、あなたからの支払いはなくなります。

当然のように思えますが、最近まで、交通事故などの不法行為による損害賠償は、双方の合意がなければ相殺処理はできませんでした。ただ、これだと面倒です。また、相殺しない状態で一方は支払い、他方は支払わない不公平な状態を招きやすいという弊害もありました。そこで昨年4月の改正民法施行により、ご相談いただいたような物損事故の賠償については、どちらかの意向で相殺できるようになりました。

もっとも、死亡やけがの賠償は、今も加害者からの相殺はできません。人身事故は被害が深刻なことも多く、実際の支払いによる賠償を確保する必要があると考えられているからです。現在は多くの運転者が任意保険に加入しており、相殺処理も含めて保険会社に任せることが多いと思われます。その場合でも内容をきちんと理解しておくと安心です。

賠償金の支払い方法に限らず、判断に迷うことがあれば、弁護士に相談してください。福岡県弁護士会の法律相談センター・予約電話番号=(0570)783552。

西日本新聞 1月27日分掲載(國田修平)

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