「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2016年8月10日

無戸籍の子 法的手続きを

▼Q 元夫と離婚する前に別の男性との間に生まれた子どもがいます。出生届を出していないので戸籍に載っていません。元夫ではなく、本当の父親の子として戸籍を作れますか。

▼A 戸籍がないと、公的な資格やパスポートなどを取得できませんし、結婚や就職に支障を来す恐れもあります。しかし、ご相談のようにさまざまな事情で戸籍のない人が多数いて、社会問題となっています。

「今から戸籍を作ればいい」と思うかもしれませんが、問題は簡単ではありません。民法上、婚姻から200日経過後、離婚から300日以内に生まれた子どもは、婚姻中の夫の子と推定されます。この要件に当てはまれば原則、元夫の子として戸籍に記載されてしまいます。

ただ、妊娠時に別居中で元夫の子を妊娠する可能性がなかったなど、元夫の子だという推定を覆す事情があれば、法的手続きで元夫の子として戸籍に載らないようにできます。そのためには、原則として家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停・審判を申し立て、元夫と子との間に親子関係がないことを確認してもらう必要があります。その上で、本当の父親から認知してもらうか、認知調停などを申し立てることになります。

無戸籍の問題は、自治体の戸籍係、法務局戸籍課〈福岡は092(721)9334〉、福岡県弁護士会の無料電話相談(毎週土曜午後0時半~3時半)=092(752)1331=などにご相談ください。

西日本新聞 8月10日分掲載(高井弘達)

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