「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年9月28日

他人が写り込んだ動画、公開できる?

▼Q 先日、夕日がきれいなスポットで記念に動画を撮影し、会員制交流サイト(SNS)に投稿しました。周りの人が写っているのですが問題ないでしょうか。

▼A 動画投稿は、楽しかった経験をすぐに共有するのに便利な手段ですね。このケースでは、動画に写っている人の肖像権を侵害していないかが問題となります。

肖像権について直接定めた法律はありませんが、判例上、人には顔や姿をみだりに撮影されない自由があり、本人の許可なく撮影したものを公表することは肖像権の侵害となることがあります。これは、有名人だけでなく一般人でも同様です。

肖像権の侵害は、社会生活を営む上で我慢すべき範囲を超えているかがポイントです。撮影された人の社会的地位や、その人がどこで何をしていた時に撮影されたか、何のために撮影されたかなどが考慮されます。撮影が違法な場合、その公表も違法とされています。

今回は観光スポットでの撮影なので、写真や動画に人が偶然写りこんでしまうことはある程度想定されます。風景の一部として個人が判別できない程度に写っている場合は問題となる可能性は低いでしょう。

ただし、多くの人の目に触れる場所でも、個人がはっきり特定できるもの、他人に見られたくない場面で撮影されたものなどは権利の侵害となる可能性が高まります。2017年の東京地裁判決では、ゲームセンターでゲームに没頭する一般人の写真が権利侵害になると判断されました。こうした点に一定の配慮をすることが大切です。

西日本新聞 9月28日分掲載(井川原有香)

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