「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年6月23日

民事裁判でIT化が進行中

▼Q 各分野でIT化が進んでいます。裁判の現場はどうですか。

▼A 民事裁判を中心にIT化が進行中です。大きく「法廷」「書面提出」「事件管理」を切り口に進められています。

現時点で最も進んでいるのが「法廷」です。「ウェブ会議」が可能な事件については、訴訟手続きの一部に導入。昨年2月に一部の裁判所で始まり、段階的に拡大しています。裁判官と弁護士がウェブ会議を通じ、法廷で会うのと同じように議論しています。一方、複雑な事件などは法廷の方が正確に話せるので、事件によって使い分けられています。

「書面提出」「事件管理」のIT化は検討段階です。

現在の裁判では大量の書面を印刷し、裁判所と相手方に渡しています。書面がオンライン提出できれば労力や時間、費用を抑えられます。手数料や切手の納付なども電子化されれば利便性はさらに向上。依頼者の負担減にもなります。

裁判所は、紙の記録で事件を管理しています。事件管理がIT化されると、事件記録のオンライン閲覧などが可能になります。裁判日程の調整などをウェブ上で行うことも検討されています。

ただ、IT化には不正ログインやなりすまし防止などの課題があります。裁判所や法律事務所が都市部に集中し、地域司法が弱まる恐れも指摘されています。
裁判は国民の権利を守る制度で、誰もが安全に利用できる仕組みが必要。弁護士会は実務をよく知る立場からIT化を研究、提言を行っています。

西日本新聞 6月23日分掲載(角倉潔)

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