「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年10月23日

東電裁判、強制起訴→裁判の経緯は

▼Q 福島第1原発事故を巡る東京電力旧経営陣の刑事裁判は、裁判になるまでにも複雑な経過をたどっていたと記憶しています。詳しく教えてください。

▼A この裁判は、内容はもちろんですが、検察が不起訴と判断したのに、市民でつくる検察審査会の判断に基づき「強制起訴」され、裁判に至ったことでも注目されています。

もともと、事故により、長期避難を余儀なくされた入院患者らを死亡させたり、多数の住民を被ばくさせたりしたとして、業務上過失致死傷罪で旧経営陣は告訴・告発されましたが、検察は2013年9月に不起訴処分としていました。事故を引き起こすような巨大津波を予測することはできず、具体的な対策を講じることはできなかったというのが理由でした。

これに対して、有権者の中から選ばれた11人で構成する検察審査会が「起訴相当」と議決。検察は再捜査し、また不起訴処分としましたが、検察審査会も再度「起訴相当」と議決。指定弁護士が16年2月に「強制起訴」し、刑事責任の追求にかじを切りました。

検察審査会とは、検察の判断が妥当だったか市民感覚でチェックする機関です。検察審査会が2度「起訴相当」の議決をしたときは、裁判所指定の弁護士を〝検察官役〟にして裁判が始まるのです。

旧経営陣に対する刑事裁判は、17年6月から今年3月までに37回の審理を重ね、9月19日に東京地裁で無罪判決が言い渡されました。指定弁護士が控訴したので、東京高裁で続きます。

西日本新聞 10月23日分掲載(早崎裕子)

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