「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2016年12月28日

人身傷害保険は事前に内容確認を

▼Q 交通事故に遭い、事故の相手方が加入する保険会社と裁判をせずに示談しました。示談では私に過失が1割あるということで過失相殺されました。そこで私が加入している人身傷害保険の保険会社に過失相殺分を請求しましたが、保険金を支払ってくれません。

▼A 人身傷害保険は人身事故に遭った保険契約者などの損害を補償する保険です。過失割合にかかわらず保険金は支払われます。しかし保険会社が被害者に発生した損害として支払う保険金の額は約款に基づき計算されます。このため損害額が示談の額より低いと計算された場合、損害は「填補(てんぽ)」(穴埋め)されたとみなされ、保険金は支払われないことになります。

例えば、損害額は100万円だけれども、過失割合が1割あるという内容の示談をし、相手方の保険会社から90万円が支払われたとします。その後、あなたが人身傷害保険の保険金を請求しても、保険会社が計算した損害額が85万円だった場合は、保険金は支払われません。

ただし多くの約款には、判決や裁判上の和解がある場合、損害額は裁判所基準に合わせるという趣旨の規定があります。

このため、加害者を相手に訴訟をし、先ほどの示談と同内容の裁判上の和解が成立した場合、損害額は100万円ですので、基本的には、過失相殺された分の10万円が支払われることになります。

人身傷害保険は大変複雑ですので、事前に保険内容をよく確認しましょう。

西日本新聞 12月28日分掲載(幸野 豪)

目次