「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年11月30日

高校の新必修科目「公共」

▼Q 「公共」が高校生の必修科目になったと聞きました。どんな科目なのですか。

▼A 本年度から、高校で「公共」の授業が始まりました。従来の「現代社会」に代わるものです。目標は「主体的な社会参画に必要な力」を「実践的に育む」ことです。そのためには、生徒が一方的に聞くのではなく、自分で考え、他の生徒と意見を交わすような授業が必要です。

そこで福岡県弁護士会では、教材の提供や出前授業などでの支援に取り組んでいます。9月には高校の先生を招いて模擬授業を行いました。先生たちが生徒役となり、道路建設を推進したい開発側と、開発によって農地が奪われ仕事がなくなる農家に別れて議論しました。

開発側は道路建設による利便性の向上と経済発展を指摘。憲法29条3項(私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる)に基づき、損失補償すればよいと主張しました。これに対して農家は、高齢のため転職困難であることに加えて、生きがいである今の仕事は、お金では代えられないと反論しました。

模擬授業で行った具体的な事例の検討は、少数者の意見にも耳を傾け、民主主義の過程を経験してもらうことが狙いです。正しい答えがある問題ばかりではありません。意見が分かれることもあります。むしろ、その議論の過程こそが生徒の力を育むことになります。

2016年から選挙年齢が18歳に引き下げられ、若年から社会参画が求められる中で、「公共」の授業はますます重要になります。

西日本新聞 11月30日分掲載(朝隈朱絵)

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