「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2025年5月29日

結婚の自由をすべての人に

▼Q ネット上で「同性婚を認めないといけないのか?」との意見を見かけました。どう考えれば良いでしょうか。

▼A 結婚の本質は、相手を人生のパートナーとして新たな家族を作ることです。個人の幸福に大きく関わります。人生の在り方を決め、実現する権利は「幸福追求権」として憲法で保障されています。

では、なぜ同性婚は認められてこなかったのでしょうか。歴史的には、同性のカップルが少数派だったことや、結婚して子孫を残すという家族の機能が当然視されてきたなどの理由があります。しかし、多数派か少数派かにかかわらず、一人一人が個人として尊重されるべきとするのが憲法の理念です。

誰かを人生のパートナーとして家族を作りたいという願いは、男女のカップルでも、同性のカップルでも同じです。人それぞれに幸福の形があり、従来の結婚の形に加え、同性婚を認めても不都合はないはずです。男女間にだけ結婚という制度を認め、同性のカップルには認めない理由はありません。

同性パートナーを配偶者に準じて扱う「パートナーシップ制度」を実施する自治体もあります。しかし、相続面などで結婚とは完全に同等ではなく、不十分です。何より、結婚したい、という個人の幸福追求の心情に正面から応えるものではありません。

時代が変われば、家族観や性別観も変わって当然です。福岡高裁を含む五つの高裁が、同性婚を認めないことは憲法違反だと判断しています。国は法律を変え、結婚できないことで悲しむ人を生まない社会を実現すべきです。

西日本新聞 5月29日分掲載(栃木史郎)

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