「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2024年12月5日

生活保護は「当たり前の権利」

▼Q コロナ禍で失職し、体調も悪化して再就職できなくなりました。貯金もなくなり、来月は家賃の支払にも困りそうです。生活保護受給には抵抗があります。どうしたらいいでしょうか。

▼A 一刻も早く生活保護を申請してください。憲法は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を送れるよう「生存権」を保障しています。生活保護は、生存権に基づいて国が生活費を支給する制度です。病気などの事情で働けない場合に利用できます。

受け取れる保護費の額は地域や家庭の人数によって決まります。実際の生活費をまかなうため、大都市ほど高くなります。借金があっても生活保護を受けることは可能ですが、保護費は日々の生活に必要な費用として支給されるもので、借金返済に充てることは望ましくありません。弁護士に相談して、生活保護と併せて借金の整理をしましょう。

申請先は居住地の福祉事務所です。口頭でも書面でも申請できます。福祉事務所はあなたの生活状況を確認して、14日以内に生活保護をするかどうかや、する場合にいくら支給するかを決定します。

国の世話になってしまうという抵抗感があるかもしれません。しかし、生存権つまり「生きる権利」は、全ての国民に保障されています。生活保護を受けることは生存権の行使で、当たり前の権利です。

このまま家賃が支払えないと、家主から督促や退去請求をされてしまいます。借金が雪だるま式に増え、破産に至る危険もあります。人間らしい生活を失わないよう「当たり前の権利」である生活保護を利用してください。

西日本新聞 12月5日分掲載(中田拓也)

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