「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年9月6日

人権保障の国際基準

▼Q 性的少数者や難民の問題について、国際的に見て日本の対応は遅れているのですか。

▼A 世界では同性婚を認める国が増えていますが、日本では認められていません。ようやく性的少数者への理解の増進を求める法律が成立した状況です。難民についても、日本での難民認定申請はなかなか認められません。強制退去手続きについても批判されています。これらの人権の保障については、日本は遅れていると言わざるを得ません。

国ごとに人権保障の内容が異なるのは、当然と思われるかもしれません。しかし、人権は、人間の尊厳に由来する人類共通の普遍的なものです。そして、日本は、国際人権規約をはじめとする多くの条約を批准しています。同規約の下では、日本政府は、規約委員会に定期的に報告書を提出し、審査を受けています。

ここでは、男女平等の実現、性的指向および性的認識を含むあらゆる理由に関する差別の禁止、難民認定制度の改善、死刑の廃止を考慮することなど、多くの指摘を受けています(詳しくは外務省のホームページに掲載されています)。

最近、各地の地方裁判所で、婚姻制度によって得られる利益を同性カップルに認めていない制度は憲法に反する状態にあるという判断が示されました。性的少数者の問題は、理解を求める段階から、実際に権利を保障する段階に進んでいくと思われます。難民認定制度についても法改正は進んでいます。

日本の人権保障は、発展途上ですが、このような動きを通じて国際基準に近づいていくことが期待できます。

西日本新聞 9月6日分掲載(杦本信也)

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