「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年7月26日

自殺があった建物の売り主の告知義務

▼Q 先日、夫が自宅で首をつって自殺してしまいました。2人で住んでいた家に住み続けるのはつらく、土地建物を売りに出したいのですが、不動産屋さんには夫の自殺を話さなければならないでしょうか?

▼A 悩ましい問題ですね。一般的に、建物で自殺があった事実は、買い主に心理的な抵抗感を抱かせ、「事故物件」として売却価格は抑えられます。不動産屋さん=宅地建物取引業者は、自殺の事実を知りえた場合、重要事項として買い主に説明する義務があります。あなたも死因を尋ねられれば、売主として説明しないといけないでしょう(告知義務)。

仮に病死や事故死と説明して売りに出したらどうなるでしょう。その場合は後日、買い主がうわさ話などで事実を知り「高い値段で買わされた」と責任を追及してくるかもしれません。すると、業者は事実を知らなかったので原則責任は問われませんが、あなたは、物件に「隠れた瑕疵(かし)」(欠陥)があったとして、売買契約の解除や代金返還を求められ、責任を負う可能性が高くなります。

ただし「建物を取り壊すことを前提に土地建物を売却した場合」、過去の自殺が隠れた瑕疵にならないとした裁判例があります。建物がなくなれば心理的抵抗感も薄れるためです。こうした条件を付けたり、更地で売り出したりすれば、責任追及のリスクは小さくなると思われます。

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西日本新聞 7月26日分掲載(松井仁)

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