「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年2月1日

内縁の妻は遺族年金を受給できるか

▼Q 専業主婦です。先日、25年間同居した夫を亡くしました。事情があって前妻との間の離婚届は提出されておらず、私は内縁の妻のままでした。遺族年金の受給はできますか。

▼A 遺族年金は、厚生年金や国民年金に加入中の方が亡くなった場合、亡くなった方により生計を維持されていた配偶者などの遺族が申請し、一定の要件を満たせば受給できます。

この「配偶者」には、事実婚や内縁関係である者が含まれます。しかし内縁の妻以外に戸籍上の妻が存在する場合(重婚的内縁関係と呼ばれています)は、原則として戸籍上の妻が優先されます。

例外的に、戸籍上の妻と夫との婚姻が実態を失い、事実上の離婚といえる状態であれば内縁の妻が「配偶者」として遺族年金を受給することも可能です。

事実上の離婚状態だったかどうかは、離婚の合意に基づき夫婦としての共同生活をやめたのかどうか、別居状態が長期間継続し固定化していたか、物理的・経済的・情緒的な交流が継続して失われていたか、などの事情を考慮して判断されます。

重婚的内縁関係であっても、このような事情があれば遺族年金の受給が可能です。ただし申請する時は、これらの事情をしっかり説明する資料を付ける必要があります。もし不支給決定が出た場合、判断のやり直しを求めて審査請求、再審査請求という2回の不服申し立てが可能です。それでも結論が変わらない場合、裁判所に訴え出ることもできます。

西日本新聞 2月1日分掲載(木村道也)

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