「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2016年10月26日

組事務所撤去、特定の団体が手助け

▼Q 家の近くに暴力団の事務所ができたようです。最近の暴力団抗争のニュースを見ていると、そのうち何か起こるのではないかと不安です。何かできることはないかと、ご近所同士で話し合っていますが、みんな「お礼参り」などの報復を怖がっています。

▼A 住民運動により自主的な退去を求める方法もありますが、暴力団事務所の使用差し止めの仮処分を申請する、という法的手続きも考えられます。

これは、訴訟の前段階として、一定の要件の下に、暴力団事務所としての使用を差し止める仮の決定を裁判所に求める手続きです。事務所として使用できなくなれば、その段階で退去に応じる可能性もあります。

こうした手続きでは、周辺住民の方が申立人になることが多いのですが、自分の名前を出すことに恐怖心や不安感を抱かれる方もおられると思います。そこで、国家公安委員会から認められた特定の団体(適格団体)が、住民から委託を受けて申立人となる制度があります。勇気を出して立ち上がった住民の方々に、暴力団からの嫌がらせなどが及ぶのを防ぐためのもので、暴力団対策法という法律に根拠があります。現在、各都道府県の暴力団追放運動推進センター(暴追センター)が適格団体に認定されています。

弁護士会の民事介入暴力対策委員会もこうした動きをサポートしていますので、お悩みの際は一度、弁護士会や暴追センターまでご相談いただきたいと思います。

西日本新聞 10月26日分掲載(吉野啓作)

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