「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年4月1日

医療事故、裁判以外の解決手法も

▼Q けがで入院して手術した後、後遺症が出ました。手術中の処置が良くなかったのではないかと思います。病院はきちんと説明してくれず納得できませんが、裁判を起こすのは躊躇(ちゅうちょ)しています。

▼A ご質問のような医療紛争の解決方法として、よく知られているのは裁判です。しかし裁判を起こすとなると時間や費用がかかるなどハードルは低くありません。患者側が一つ一つの処置を調べ、医療者の注意義務違反を立証するのは難しい現実もあります。

治療による後遺症の補償よりも、病院からしっかりとした説明を受けられないことが不満、とのことですね。病院とじっくり話し合い、解決を目指したいのが本音でも、いったんお互いの関係がこじれてしまうと、当事者だけで話し合うのは難しくなってしまう恐れがあります。

福岡県弁護士会の紛争解決センターが行っている「医療ADR」の利用を検討されてはどうでしょうか。ADRとは、訴訟によらない紛争の解決手法のことを指し、中立的な第三者(あっせん・仲裁人)を間に立てて、当事者同士が話し合いを行います。

医療ADRには、原則として、患者側代理人として経験豊富な弁護士、病院側代理人として経験豊富な弁護士の両方があっせん・仲裁人として関わり、判断が一方に偏らないようにしています。医療紛争の実態に詳しい、さまざまな立場の弁護士が関与することで、専門的で複雑な問題を適切、迅速かつ公平に解決することが期待できます。

西日本新聞 4月1日分掲載(井上浩一)

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