「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年10月14日

父による母への暴力がつらい

▼Q 新型コロナウイルス感染症の影響でお父さんが在宅勤務になりました。最近はいつも機嫌が悪く、お母さんを怒鳴ったり、殴ったりします。私に対する口調も乱暴になってきました。不安で夜もよく眠れません。何よりお母さんを助けたいです。

▼A お母さんを助けられなくてつらいでしょうね。しかし、あなたは決して悪くありません。お父さんがお母さんに暴力を振るったり、暴言を吐いたりするのは、犯罪になりかねない行為です。また、その光景をあなたに見せることは、あなたに対する心理的虐待に当たります。これは「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」ともいわれ、児童虐待防止法という法律でも禁止されている行為です。

「面前DV」にさらされ、無力感や罪悪感を抱き続けると、自己肯定感が低下し、対人関係をうまく築けなくなったり、ひどい場合にはトラウマが残ったりするともいわれます。このため、「面前DV」を心理的な虐待ととらえて、社会全体で対処することにしているのです。

お父さんには、暴力や暴言をやめてもらう必要があります。あなたがいま誰にも相談できず、行き場のない状況だとしたら、福岡県弁護士会が毎週土曜日午後0時半~3時半に実施している、無料相談電話「子どもの人権110番」=092(752)1331=に連絡してください。あなたの気持ちに寄り添いながら、前に進めるよう力になります。

西日本新聞 10月14日分掲載(有満理奈子)

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