「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2016年11月30日

性被害者、顔見られず裁判参加も

▼Q 知り合いの男から性的暴行を受けました。男は強姦(ごうかん)罪に問われています。近く開かれる裁判では、私も被害者として参加できると聞きました。ですが、他にも被害者がいて、一度に裁判が行われるようです。男に顔を見られたくありませんし、周囲の人に顔や名前が知られてしまうのではと心配です。

▼A 被害に遭われて大変なご心痛だったと思います。これから始まる裁判で、あなたは「被害者参加弁護士」を依頼することができます。サポート役の弁護士が裁判を“伴走”しますので何でもご相談ください。

男と顔を合わせたくないという気持ちはよくわかります。裁判所に行くだけでも緊張するのに、男の顔を見てしまうと、法廷で平静を保っていられなくなるでしょう。そのため裁判所は、あなたに安心できる人を付き添わせたり、あなたと男との間や、傍聴席との間についたてを立ててくれたりします。他の被害者との間についたてを用意してくれた例もあるので、誰かに顔を見られる心配はありません。

それでも負担が大きければ、被害者参加弁護士だけが裁判に行くこともできます。

通常の刑事裁判では、起訴状朗読などで被害者名が読み上げられますが、特に性犯罪の場合「被害者」や「Aさん」と呼び、あなたの名前が分からないように配慮されます。

性犯罪被害者の心の痛みは、裁判に関わる人みんなが理解を深めようと努力し、配慮しますので、安心して参加してください。

西日本新聞 11月30日分掲載(小谷百合香)

目次