「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年7月29日

遺言書を紛失しないか心配

▼Q 遺言書を自分で書いて世話になった人たちに財産を残したいのですが、私や家族が認知症になったりしてその存在を忘れたり、紛失したりしないか心配です。

▼A ご指摘の「自筆証書遺言」は、これまで自宅の仏壇や金庫などで保管するしかありませんでした。行方不明になったり、誰かに改ざん・廃棄されたりする恐れがゼロではなく、相続人間で紛争になることがありました。

こうした問題に対処するため新法が制定され、全国の法務局が自筆証書遺言を保管する制度が7月10日から始まりました。

利用したい人は、まず居住地や本籍地などの法務局に、ホームページや電話で保管手続きのための予約をします。当日は、本人が遺言書や保管申請書(ダウンロードするか窓口で入手)、住民票、本人確認書類などを持参し、保管手数料(3900円)を払います。本人は、保管中の遺言書を閲覧、変更、撤回することができます。

本人が亡くなった後、相続人らは遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けたりできます。法務局で保管されていた遺言書は、自宅保管の遺言書と異なり、偽造や改ざんを防ぐための家庭裁判所による「検認」が不要なので、遺産相続の手続きを軽減できる利点もあります。

ただ自筆証書遺言は、財産目録以外は自分で手書きし、日付や署名の記入など、さまざまな決まり事を守らなければ無効になります。書くのが難しい方は、料金を払って公証人に作成を頼む「公正証書遺言」にするのも有効な手だてです。

西日本新聞 7月29日分掲載(池端祥久)

目次