「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年5月22日

夫亡き後、義父を介護しているが・・・

▼Q 夫が亡くなり、同居している寝たきりの義父を1人で介護しています。最期までお世話し、みとるつもりですが、私は法定相続人ではないので、義父の遺産は相続できないと聞きました。お金のために介護しているわけではありませんが、私の行為が否定された気持ちになります。

▼A おっしゃるとおり、これまで相続人ではない親族は、たとえさまざまな形で生前の故人を支えたとしても、原則、遺産を受け取ることができませんでした。

しかし実子である配偶者が亡くなった後も、義父母の事業の手伝いや介護を続けている方は多く、これでは不公平として民法(相続法)が改正されました。今年7月から、相続人ではない親族が「特別の寄与」をしたと認められる場合、寄与の度合いに応じて金銭の支払いを相続人に請求できるようになります。話がまとまらなければ、家庭裁判所に対して処分を求めることも可能です。

ただ注意が必要です。死亡の事実や相続人が誰かを知ってから6カ月、または死亡から1年が経過してしまうと、裁判所に処分を求めることはできません。またこの制度を利用できるのは法律上の親族、すなわち6親等内の血族と、3親等内の姻族に限られます。

事実婚カップルや同性カップルなど、家族の在り方が多様化している時代です。法律上の親族に限定したことに否定的な意見もあります。しかし、これまで法定相続人に限られていたことからすれば、一歩進んだといえるのではないでしょうか。

西日本新聞 5月22日分掲載(柿木翼)

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