「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年6月30日

祖父が不要な物買わないか心配

▼Q 高齢の祖父が1人暮らしをしています。判断能力が落ちつつあり、悪質な訪問販売で不要な物まで買わされないか心配です。

▼A 訪問販売は店舗に行くのとは違い、心の準備ができていないため雰囲気にのまれやすく、早く帰ってもらいたい気持ちにもなるといった点などから、判断を誤ることがあります。

そこで特定商取引法は、訪問販売などで交わした契約について一定期間内であれば、無条件で契約の解除(クーリング・オフ)を認めています。さらに事業者が事実とは異なることを言ったり、重要な事実を故意に隠したりした場合や、必要な量を著しく上回る商品を買わせた場合などは、クーリング・オフ期間が過ぎていても、契約を取り消せる可能性があります。

熊本県玉名市などのように、「訪問販売お断りステッカー」を貼った住宅で勧誘をしただけで違反とするような、先進的な条例を定めている自治体もあります。

ただ、認知・判断能力の低下などで、高齢者が悪質な訪問販売の被害に遭う事例は後を絶ちません。お年寄りが契約前に近所の人に相談したり、日頃から近所の人たちが気にかけたり、コミュニティーの力を見直すことで被害を防止できないでしょうか。

福岡県弁護士会は「おひとりさまの老後」などの著書で知られる上野千鶴子先生を招き、7月17日に福岡市でシンポジウム「地域共生社会と消費者の安全」を開きます。オンライン参加もできます。ぜひホームページで情報をご確認ください。

西日本新聞 6月30日分掲載(吉田大輝)

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