「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2019年6月12日

養育費の支払いが途絶えた

▼Q 調停で離婚しましたが、子どもの養育費が途中から支払われなくなりました。裁判所に強制執行を申し立てたいのですが、制度が変わると聞きました。

▼A 強制執行は、裁判所が相手方の給料や預貯金、不動産などの財産を差し押さえ、直接取り立てをする制度です。給料を差し押さえると、養育費は未払い分だけでなく将来の分もその都度、相手方の勤務先から支払われるようになります。ただし、強制執行を申し立てるには、申立人が相手方の勤務先、金融機関名、不動産の所在などを特定しなければいけません。離婚から時がたつと、特定が難しいケースもあるでしょう。

こうした問題を解決するため、民事執行法が5月10日、改正されました。新しい制度では、裁判所が第三者に照会し、相手方の財産に関する情報を得られるようになります。例えば、銀行や証券会社からは預貯金や株式の情報、登記所からは不動産の情報、市町村や日本年金機構からは給料に関する情報などが得られます。また相手方を裁判所に呼び出して行う「財産開示手続き」について使える範囲が広がり、相手方が応じない場合の罰則も強化されました。

養育費は子どもの権利です。健やかな成長を支えます。新制度の運用は来年か再来年になる見込みですが、今でもできることはあります。福岡県弁護士会は6月下旬、県内12カ所で無料相談電話「女性の権利110番」を開設します。また月1回の「養育費・ひとり親110番」でも受け付けています。詳しくは県弁護士会ホームページをご覧ください。

西日本新聞 6月12日分掲載(山崎あづさ)

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