「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年3月3日

同じ仕事...待遇差が納得できない

▼Q 私は契約社員です。同じ内容の仕事をしている正社員より基本給が低く、納得いきません。正社員は勤続年数に応じて基本給が上がるのに、私は何年勤めても変わりません。契約社員だから仕方ないのでしょうか。

▼A 政府は、働き方改革の一環で「同一労働同一賃金」の導入を進めています。
仕事の内容などが同じであれば、正社員であっても、パートやアルバイト、派遣社員であっても、同じ賃金を支払うという制度。2018年成立の働き方改革関連法により、大企業は20年4月に義務化され、中小企業も今年4月から適用されます。この制度の下では、単に「正社員だから」「パートだから」という理由で待遇差をつけることが禁じられます。

待遇差を巡る最近の判例を見てみましょう。例えば、日本郵便の契約社員らが正社員と同じように扶養手当や年末年始勤務手当、病気休暇などを与えるよう求めた訴訟で、最高裁は「不合理な格差で違法だ」として、原告側の訴えを認めました。

一方、大学の元アルバイト職員や鉄道子会社の元契約社員による訴訟では、最高裁は正社員とは職務の内容に一定の違いがあるなどとして、賞与や退職金での待遇差は「不合理とまでは評価できない」と判断しました。

物流会社で働く契約社員が、正社員との待遇格差是正を求めた訴訟では、無事故手当や皆勤手当などの格差は「不合理」と判断されたものの、住宅手当は「不合理ではない」とされました。待遇差の検討には法的な分析が必要です。疑問を感じた場合は弁護士にご相談ください。

西日本新聞 3月3日分掲載(辻陽加里)

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