「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2018年3月21日

急死した夫名義の預金、引き出せる?

▼Q 夫が急に亡くなりました。相続人は私と子の2人です。生前、夫には預金から葬儀費を出し、残りは生活費に使っていいと言われており、夫の通帳と銀行印を預かっています。預金を引き出してもいいのでしょうか。また夫名義のマンションに住み続ける場合、登記を私名義にしないと住めないのでしょうか。

▼A 預金は、あなたに相続させるとの遺言がない以上勝手に引き出してはいけません。2016年12月、最高裁で判例が変更され、預貯金も遺産分割の対象となりました。その結果、相続人全員が預金を引き出してもよいという内容の合意書を銀行に提示しなければ引き出せなくなりました。協議がまとまる前にやむを得ず引き出さなければならない場合は、トラブルを防ぐため、お子さんから承諾書をもらいましょう。

マンションに住み続ける場合、原則としては、遺産分割であなたが所有権を得る必要があります。ただ自宅をもらう分、その評価額に応じて預貯金の取り分が少なくなり、生活費に困るおそれがあります。相続登記は義務ではありませんが、名義変更しておいた方が将来混乱を招きません。

政府は、こうした問題に対応するため、遺産分割前の預金の小口払いを可能にする制度や、故人の配偶者が自宅に住み続けやすくする配偶者居住権の新設などを盛り込んだ民法改正案を今国会に提出しました。相続登記の義務化も検討されています。注目しましょう。

西日本新聞 3月21日分掲載(家永由佳里)

目次