「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2013年2月23日

放置していた権利は消滅する

▼Q 13年前、友人に30万円を貸しました。返してほしいと話したら「もう時効だから」と・・・。諦めなければならないのですか。

▼A 権利が行使されない状態が一定期間続いた場合、時効が成立します。「消滅時効」の制度です。「権利の上に眠る者は保護しない」という法格言に由来するもので、法が定めた時効期間が過ぎた場合、債務者が時効の利益(借金を返さなくていい)を得ることを援用(意思表示)すると、債権者の権利は消滅してしまいます(返してもらえなくなる)。

時効期間は権利の内容によって異なります。一般的な債権は10年間。質問のケースは13年前に貸したということなので、時効が完成している可能性があります。消費者金融の貸付金や家賃は5年、交通事故の損害賠償請求権や離婚の慰謝料請求権は3年、賃金は2年、飲み屋さんのつけは1年で時効が成立します。

もっとも、一定の事由があれば時効の進行が「中断」する場合があります。(1)請求(2)差し押さえ・仮差し押さえ・仮処分(3)承認-の3種類のうち、いずれかの言動をしていれば「眠った」ことにはなりません。その時点でリセットされ、また新たに時効期間が始まります。さらに、時効期間が経過した後でも、借金の一部を返したりすると、もはや時効の利益を援用できなくなります。

権利を放置したままにすると、いつの間にか時効消滅していたという場合があります。期間が経過しているか、時効を中断させるには何をすればいいのかなどについては、弁護士にご相談ください。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 2月23日分掲載(堺勇介)

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