「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2013年11月6日

医薬品のネット販売と憲法

▼Q 裁判で決着がついて、医薬品をインターネットで買えるようになったそうですね。どんな裁判だったのですか。

▼A 憲法は職業選択の自由を保障し、国民は誰でも就きたい職業に就き、自由にその仕事をする権利が保障されています。ところが、医薬品のネット販売には厚生労働省令で規制がかかっていました。副作用によるリスクから国民を守るため、というのが理由でした。

そこで営業の自由、つまり人権が国の決まりで侵害されたのは違憲だとして裁判が始まりました。業者だけでなく、医薬品をネット購入していた一般消費者にも関係があったため、裁判の行方が注目されていました。

副作用のリスクと、営業や薬を買う自由とをどう調整するか。必要性があって自由を制限するとしても、どこまで許容できるか。裁判で人権侵害(憲法違反)が争われるとき、その点が問題になります。

18歳だけど酒が飲みたい、女性同士で結婚したい、学校で宗教を教えたい・・・。「自由」といっても、国の規制によってできないことがさまざまあります。

このように、憲法は暮らしの身近な問題と関連があります。生活の中でどんな自由が保障され、どんな理由で制約されているか考えてみましょう。今、改憲が議論されています。政治の世界だけの話ではありません。一人一人が憲法に関心を持つことが大切です。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 11月6日分掲載(中野公義)

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