「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年2月10日

日本在住の外国人 相続どうなる

▼Q 日本で暮らす米国人です。妻は既に他界し、日本国籍の娘が1人います。財産は米国の銀行にある預金と日本のマンションです。私が死んだら相続手続きはどうなるでしょうか。遺言をしておいた方が良いでしょうか。

▼A あなたの相続は、日米どちらの法律が適用されるか(準拠法)が問題となります。まず「法の適用に関する通則法」で、相続に関する準拠法は財産を残す人の本国法になります。あなたの場合は米国法が準拠法に指定されます。

これを前提に、預金については準拠法である米国法が適用されます。米国では、預金の相続には裁判所の許可が必要な場合が多く、裁判所に「プロベイト」という手続きを申し立てます。

不動産もいったん米国法が指定されますが、米国法では所在地の法律を指定すると規定している州が多いです(州によって若干異なります)。このため、マンションに関しては日本の法律に戻って相続手続きを行うことになります。

遺言をする場合は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に従って行う必要があります。あなたの場合、日米どちらの方式でも遺言ができます。ただ遺言をしなくてもマンションは日本の手続きになりますし、遺言があっても米国の銀行は「プロベイト」を求めますので、相続手続きをスムーズにするという観点では、遺言をする意味はあまりないでしょう。

外国人の相続は手続きが複雑なため、国際相続を扱う弁護士への相談をお勧めします。福岡県弁護士会のホームページにある「弁護士検索」で探すこともできます。

西日本新聞 2月10日分掲載(上村慧)

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