「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2024年2月28日

LGBTQ+の自殺を防ぐには

▼Q 兄はゲイですが、家族以外には秘密にしてきました。ところがこれを知った同僚から職場にアウティングされ、ショックで仕事を休んでいます。「死にたい」とも口にしていて、とても心配です。

▼A アウティングとは、本人の承諾を得ずに、公にしていない性的指向や性自認に関する秘密を暴露することです。厚生労働省の「パワハラ防止指針」でも、私的なことに過度に立ち入る型のパワハラとされています。病歴を暴露したりするのと同じです。

アウティングは、社会の無理解や偏見の下に、性的少数者(LGBTQ+)を無理やり引きずり出す行為です。アウティングされた当事者は、精神疾患を発症したり、自殺に追い込まれたりするなど、深刻な被害を受けると言われています。

お兄さんの「死にたい」という言葉は、決して大げさな表現ではありません。既にうつ病などの精神疾患を発症している可能性もあります。お兄さんの気持ちをしっかり受け止めた上で、専門家による精神科医療などにつなげることが重要です。

この問題は、自殺対策としても考える必要があります。政府の「自殺総合対策大綱」においても、LGBTQ+には自殺したいという気持ちを抱える方の割合が高く、その要因はやはり社会の偏見などではないかと指摘されています。

福岡県弁護士会では3月9日に福岡市の福岡県弁護士会館でシンポジウム「いのちを、共に支えるために」を開催します。公認心理師のみたらし加奈さんを招き、LGBTQ+の自殺を予防するために何ができるのかを考えます。

西日本新聞 2月28日分掲載(緒方枝里)

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