「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2024年1月24日

犯罪被害給付金が増額へ

▼Q 「犯罪被害給付金」という制度を聞きました。どのような制度ですか。

▼A 犯罪被害給付金制度は、犯罪被害者や遺族らに国が一時金を支払う制度です。対象は、故意の犯罪によって死亡した被害者の遺族や、重傷を負った被害者本人。殺人罪や傷害罪などが代表的です。

通り魔的犯罪では、被害者が加害者から賠償を受けられないという問題がありました。そこで、この制度が作られ、国から被害者に給付金が支払われることになりました。

家族や顔見知りによる犯行の場合は、給付金が支払われなかったり減額されたりする仕組みとなっています。しかし、殺人罪の場合、見ず知らずの犯行は1割程度に過ぎず、親族間の犯行が約半数を超えるそうです。このため、多くの被害者が給付の対象外になってしまっています。

何より問題なのは、給付金額が低いことです。2022年度のデータでは、死亡被害者1人当たりの支給額は平均約740万円です。一方、交通事故の死亡被害者の場合、自賠責保険だけでも1人当たり平均約2400万円です。遺族の苦しい思いは同じなのに、あまりにもバランスを欠いています。

そんな中、23年6月、犯罪被害給付金を増額するとの政府方針が報道されました。具体的な額や増額方法は今年5月までにまとめるということです。より被害者や遺族の生活の支えとなる制度になることを期待しています。方針には、弁護士による被害者支援の充実も盛り込まれました。福岡県弁護士会では犯罪被害者の無料法律相談=092(738)8363=を行っています。

西日本新聞 1月24日分掲載(栗脇康秀)

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