「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年3月24日

個人情報の漏えいが不安

▼Q サービスを利用している企業から自分の個人情報が流出しないか心配です。法律はどうなっていますか。

▼A 顧客の氏名や住所、電話番号、メールアドレス、クレジットカード情報などの個人情報を保有する企業は数多くあります。こうした個人情報を使えば、誰かがあなたになりすまして会員制交流サイト(SNS)に投稿したり、買い物をしたりすることができます。

個人情報を取り扱う企業には以前から、漏えい防止などの安全管理義務が課されていました。さらに昨年、個人情報保護法が改正(全面施行は来春の予定)され、データの漏えいなどで個人の権利や利益が害される恐れが大きい場合、その当事者は企業に(1)データの利用停止(2)データの消去(3)第三者への提供停止―を請求できるようになりました。企業には、漏えいの事実を国に報告し、個人に通知する義務が課されます。

つまり、企業が自主的に安全管理に努めるだけでなく、個人からの請求がしやすくなりました。企業側には、こうした事態にならないよう、より念入りに漏えい防止に取り組むことが期待されます。

もっとも、漏えいした個人情報を元に戻すことはできません。漏えいについて損害賠償請求を行った例もありますが、数千~数万円程度の賠償しか認められていません。したがって、個人の側からの自衛は依然として必要です。まず、本当に必要な個人情報だけを提供することが重要です。その上で、被害を最小限に食い止めるために、パスワードを使い分けたり、取引履歴を小まめにチェックしたりするなどの対策を行いましょう。

西日本新聞 3月24日分掲載(古賀健矢)

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