「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年5月17日

複数の遺言が見つかったら?

▼Q 祖母は公正証書遺言を作成して亡くなりましたが、これより後の日付で便箋に書かれた遺言があると親族が主張しています。どちらの遺言が優先するのでしょうか。

▼A 遺言には、公証人に作成してもらう公正証書遺言と本人が手書きする自筆証書遺言があります。便箋に書かれた遺言は法律(民法)に定められた自筆証書遺言としてのルールを満たしていれば有効で、効力も同じです。遺言は亡くなった人の最終的な意思を保護する制度ですから、前の遺言と後の遺言の内容が違う場合、後の遺言が優先します。

自筆証書遺言の基本的なルールは(1)すべての文章を本人が手書きし(2)作成年月日が記され(3)本人の署名があり(4)本人の印鑑が押されている-ことです。ただ亡くなった人が実際に書いた字かどうかなど、自筆証書遺言特有の争いが生じるケースがあります。作成者が死亡した後に家庭裁判所が遺言書の存在や内容を確認する「検認」手続きも必要になります。公正証書遺言は費用はかかりますが、より確実で検認の手続きが不要というメリットもあります。

紛争を防止し、円滑に手続きを進めるために遺言をする以上、遺産の全体像の把握、遺産の分け方など、実態に即した緻密な検討をすべきです。遺言の作成を考えたら、県内に17ある福岡県弁護士会の法律相談センターにお気軽に相談してください。相談予約電話は(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 5月17日分掲載(池田耕一郎)

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