「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2010年10月22日

検察審査会に必要なもの

小沢一郎氏、強制起訴-。このニュースが先日、大きく報じられました。検察審査会が「検察官が不起訴にしたのはおかしい」と判断したのです。

裁判員裁判が始まったのと同じ日(昨年5月21日)に改正検察審査会法が施行されました。無作為の抽選などで選ばれた11人の有権者が、検察官の下した不起訴決定が適切、適当かを判断する制度です。検察審査会で2回、起訴すべきとの結論になった場合は必ず起訴される(強制起訴)ことになりました。

兵庫県尼崎市のJR事故、同県明石市の歩道橋事故を皮切りに強制起訴が出始めています。検察官が起訴する権限を一手に握っていた「起訴独占主義」を一部修正し「市民の感覚」を反映させるのが改正の目的です。

今、刑事裁判の世界に市民感覚を反映させる手続きが始まっています。とはいえ、忘れてはならないのは、検察審査会の議決による強制起訴が1人の人間を刑事被告人とし、長期間不安定な立場に置くということ。十分な証拠もないのに「何となく」とか感情だけで議決をしてしまい、刑事被告人としての負担を負わせることは問題でしょう。

また検察審査会が起訴すべきとした事件が無罪ばかりでは、かえってその判断の適正が疑われることになってしまいます。

「市民感覚が重要、一方で有罪にできる証拠があるかを慎重に考える」。これこそが検察審査会に求められていることではないでしょうか。

◆天神弁護士センター=092(741)3208。

西日本新聞 10月22日分掲載(小林登)

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