「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年7月31日

夫亡き後、家や預金の相続は・・・

▼Q 体調の悪い夫が私より先に亡くなったら、その後の生活が心配です。夫には前妻との間に息子がおり、私とはあまりうまくいっていません。夫の死後も、私は夫名義の今の家に住み続けられますか。生活費のために、家だけでなく預金も相続したいのですが。

▼A 家の評価額や預金額によっては、あなたが家を相続すると、それだけで法定相続分に達してしまい、預金は相続できない恐れがあります。家を息子さんが相続し、あなたはその家を息子さんから借りて住む形にし、預金はあなたが相続するという方法はありますが、息子さんと賃料などで合意しなければなりません。

ところで相続に関する民法などが昨年改正され、配偶者の生活安定のために「配偶者居住権」という制度が創設されました。これを利用すれば、あなたは今の家に無償で住みながら、家の所有権は息子さんが取得できるようになります。その場合、あなたは預金の一部を相続できます。

ただし注意が必要です。この制度は来年4月1日に施行され、その日以降に発生する相続でないと適用されません。また、あなたが配偶者居住権を取得する場合は、その財産的価値に相当する価額を相続したとみなされるので、相続税の対象となります。

あなたが配偶者居住権を取得する方法はいくつかありますが、まずは早めに夫に相談して、来年の4月以降に配偶者居住権をあなたに遺贈する旨の遺言を、夫に作成してもらってはいかがでしょうか。

西日本新聞 7月31日分掲載(郷司佳寛)

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