「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年5月10日

民事裁判手続きとIT化

▼Q 今では職場や学校で普通にオンライン会議をしています。海外では裁判もオンラインの国があると聞きました。日本の裁判手続きではどうですか。

▼A 日本の裁判手続きでもIT化が進んでいます。近い将来、民事裁判では、自分のパソコンやスマホからウェブ会議で裁判手続きに参加したり、書類をオンライン提出したり、裁判所のサーバー内の裁判記録をオンラインで閲覧できるようになったりする予定です。

これまでは裁判所の執務時間内に裁判所に行く必要がありました。しかし、IT化によって時間の制約が緩まります。裁判所に出向く時間や交通費も軽減されますので、民事裁判手続きを利用しやすくなります。

実はIT化に向けた先行的試みとして、2020年に手続きの一部でウェブ会議の運用が始まっていました。22年に最高裁が民事裁判書類電子提出システムの運用を開始し、準備書面など一部の書類のオンライン提出も可能となりました。ただ、現状は弁護士の利用に限られています。

全般的なIT化のため、22年5月に民事訴訟法が改正され、ようやく立法面での準備が整ったところです。一方で、誰もが利用しやすくすることや、プライバシー保護などについては一般以上のレベルが求められるので、まだまだ課題も残されています。

また、今後は離婚・面会交流・遺産分割などの家事事件や、令状発行などの刑事手続きでも、IT化が進む予定です。裁判手続きのIT化は国民全員の権利に関わる問題です。皆さんにも興味・関心を持っていただければと思います。

西日本新聞 5月10日分掲載(森裕美子)

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