「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年5月3日

選挙権拡大の歴史

▼Q 「18歳で選挙権」が当たり前になってきましたが、昔は男性だけの選挙だったと聞きました。どんな選挙だったのですか。

▼A 今日は憲法記念日。憲法三大原則の一つが、選挙権を中心とした国民主権です。日本の選挙権拡大の歴史をみてみましょう。

大日本帝国憲法公布翌年の1890年、第1回の衆議院議員総選挙が行われました。しかし、有権者は高額納税者の男性(全人口の1・1%)だけでした。また、貴族院の議員は選挙以外で選ばれていました。

1925年になると納税額の制限はなくなりました。しかし、有権者は25歳以上の男性だけでした。当時は、女性は男性に従属する存在だという考えが強かったためです。

その後、多くの苦難と運動の積み重ねがあり、46年、女性が初めて有権者となりました。同時に有権者となる年齢も20歳以上に引き下げられました。日本国憲法が公布されたのは、その7カ月後のことです。2015年には有権者となる年齢が18歳以上に引き下げられました。

このように、現在のような普通選挙が実現したのは長い歴史の中ではごく最近のことなのです。世界には、まだ普通選挙ではない国もあります。変動の激しい現代において、国のあり方を決める権利としての選挙権の重要性はより高まっています。

福岡県弁護士会では「市民とともに考える憲法講座」を開催しています。5月11日は、山田博文・群馬大名誉教授の講演「防衛費増大でわたしたちの生活は?」です。参加費無料、オンラインでも参加できます。くわしくは同弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 5月3日分掲載(福留英資)

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