「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年3月29日

弁護士が裁判官になれる?

▼Q 弁護士が裁判官になったテレビドラマを見ました。そんなことできるんですか。

▼A できます。実際にたくさんの弁護士経験者が裁判官として活躍しています。裁判官も弁護士も同じ司法試験に合格し、合格後に進路を決めます。法曹としての資質は変わらず、弁護士も裁判官の仕事ができるのです。もちろん、裁判所から採用される必要があります。この点は一般の転職と同じです。

裁判官としての働き方には2種類あります。一つは「常勤裁判官」で、弁護士から裁判官に完全に転職してしまうものです。もう一つは「非常勤裁判官」で、普段は弁護士の仕事をしながら、週1日は裁判官の仕事(調停官)をする仕組みです。

なぜこのような仕組みがあるのでしょうか。弁護士には弁護士としての社会経験があります。何より、依頼を受ける立場で当事者に寄り添ってきた経験は、生粋の裁判官にはないものです。このような経験を裁判制度に生かすため、2001年以降の司法制度改革の中で制度化されました。これまでに100人以上の弁護士が常勤裁判官になっています。

もっとも、どこの世界でも転職は大変で、応募者は伸び悩んでいます。非常勤裁判官制度も、導入している裁判所は限られています(九州では福岡家庭裁判所と福岡簡易裁判所)。裁判所の予算の問題もあります。

しかし、弁護士経験のある裁判官が増えることは、司法を国民に身近なものにし、多様な考え方を裁判に反映させていくために大事なことです。弁護士会も、弁護士任官制度の広報、制度に応募した弁護士の支援などで後押ししています。

西日本新聞 3月29日分掲載(宮下和彦)

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