「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年11月3日

遺言を書いた方がよい場合は?

▼Q 先日、還暦を迎えました。遺言を書いた友人もいますが、私も作成しておいた方がよいのでしょうか。

▼A 遺言は、あなたが亡くなったときの財産の分け方を、あなたが決めておくものです。遺言がない場合の分け方(法定相続)は民法で決まっていますので、絶対に遺言が必要というわけではありません。

では、どのような場合に遺言を残した方がいいのでしょうか。

まず、法定相続と異なる分け方をしてほしい場合です。世話をしてくれた子どもに多めに分けてあげたいときや、相続人以外に贈与や寄付をしたいときなどです。相続人の間で争いが予想されるケースでも遺言があった方がいいでしょう。

次に、財産の分け方が難しい場合があります。例えば、預金だけなら相続分に沿った割合で分ければよいのですが、不動産が含まれると分け方が難しくなることがあります。また、会社経営者の場合、持ち株が相続されます。株式は、割合で分けるのは簡単ですが、株主が分かれると会社の運営が不安定になることがあります。会社の将来を見据えて遺言で決めておいた方が安心です。

遺言の作成には一定の手間がかかります。公証役場で公正証書遺言を作成するなら、その手数料も支払わなくてはなりません。手間と費用に見合った意味があるのかも考える必要があります。

なお、いわゆるエンディングノートは、遺言のような法律的効力はありません。あなたの意向を伝える手紙のようなものですが、それで済む場合は活用してみてもよいでしょう。

西日本新聞 11月3日分掲載(角倉潔)

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