「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2023年5月17日

精神科病院から退院したいが

▼Q 夫が「誰かに監視されている」などと言い出し、統合失調症との診断で入院しました。私も同意しました。しかし、現在は症状もなくなり、夫も退院を望んでいます。ところが主治医は退院をOKしません。どうしたらよいですか。

▼A 入退院は本来、患者の意思に基づいて行うべきものですが、本人に適切な判断ができないこともある精神疾患では強制入院が認められています。よく知られている強制入院は自傷他害の恐れがある場合の「措置入院」ですが、自傷他害の恐れがなくても家族の同意で入院させる「医療保護入院」もあります。ご相談の件はこれだと思われます。

日本の精神科入院の平均日数は270日程度で、OECD諸国の多くが40日以下なのに対して著しく長くなっています。また、強制入院の比率もEU諸国が平均10%台なのに対し、日本は約50%にもなっています。この比較を見ると、日本では必要のない入院が多くあるのではないでしょうか。

必要がなくなった強制入院からの退院や、入院環境の保障は、法律上の権利です。弁護士に相談してみてください。福岡県弁護士会では、精神科に入院している方への無料出張法律相談(精神保健当番弁護士)を行っています。

強制入院にはこれ以外にもさまざまな弊害があり、日弁連は2021年に強制入院制度自体を段階的に廃止すべきだと決議しました。福岡県弁護士会でも20日にシンポジウム「STOP!強制入院」を開催します。無料。オンライン参加もできます。詳しくは同弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 5月17日分掲載(田瀬憲夫)

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